お地蔵さんぽ【vol.54】身代地蔵尊@滝野川

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

身代地蔵尊という旗が風になびいていた。ここは滝野川1丁目。

滝野川不動尊の隣にあったのを見つけた。気になったのは手前にある「江戸三大」「身代自動尊」という石碑。あちらこちらに「身代地蔵尊」あるいは「身代わり地蔵尊」はあると思うのだけれど、三大のあと2つはどこだろうかと思った。

とりあえず、お賽銭をあげてお参りをする。

たくさんのお花などが供えられ、とてもよくお世話をされているお地蔵さまだ。

お顔を拝ませていただこう。

とても柔和なお顔をしていらっしゃる。新しいお地蔵さまだろうか。赤い帽子や涎掛けも素敵。

身代わり地蔵は、まんが日本むかし話にもなっていた。

母と息子である五作は2人暮らしをしていた。五作は朝晩と毎日近所のにあるお地蔵さまをお参りしていた。あるとき母がまくわ瓜を食べたいというので、息子は悪いこととは思いながらも畑からまくわ瓜を盗んで母親に食べさせる。母はもう一度だけ食べたい、というので、再び畑から盗もうとしたところ、畑の主人に見つかり、刀で切りつけられた。そのまま、畑の主人は帰ってしまったが、あとで、瓜一つぐらいで切りつけたことに後悔して、翌日畑に見に行くと、五作はいない。と、近所のお地蔵さまの前に人だかりができている。なにごとかと思って、その主人が見ると、なんとお地蔵さまが刀キズを追っていたのだ。あわてて、五作の家に行ってみると、けがひとつしていない五作がいた。以来そのお地蔵さまは身代わり地蔵と呼ばれるようになったのだそうだ。

日々、信心深くお参りをしていると、お地蔵さまがその人の不幸を身代わりで背負ってくれるというお地蔵さまはなんとも尊い存在だ。

とはいえ、よく考えてみればそれこそ、人間の思いそのものではないかと思うのだ。

たとえば、幼くして亡くなった孫の祖母が、できればかわってやりたいなどとテレビのインタビューで答えている姿を見るにつけ、身代わり地蔵は、人間の思いを具現化しているのではないかと思うのだ。
 
 

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この連載について

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人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。