お地蔵さんぽ【vol.40】復興地蔵尊@湯島

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

復興地蔵尊@湯島

僕がイメージするお地蔵さまにピッタリのたたずまいなのが湯島にある復興地蔵尊だ。湯島天神へのぼる石段の下にある。

階段下に2体のお地蔵さまがいらっしゃる。湯島天神の坂は男坂と女坂があるのだが、こちらのお地蔵さまは男坂の下にある。

お花も供えられていて、よくお世話されている。

よく見ると2つセットではなく、別々の時代につくられたようだ。お顔のかんじからしても少し違う。

右側のお地蔵さんについての由来が書かれている。それによれば、関東大震災の後、当時の町会長を中心として有志たちによって、罹災者の安寧と早期の復興を願って、三百年来火伏寺として伝統を持つ心城院の協力を得て災害復興地蔵尊として建立したのだそうだ。震災で亡くなった方々の冥福と地元の平和発展を祈った。

その後、1945年3月10日の東京大空襲で近隣の町会はほとんどが焦土と化したなかで当町会は一軒の損失もなくその難を免れた これは「お地蔵さん」の御加護によるものと往時の人々の心に深く刻まれた。

さらに左のもう一体についても書かれている。

左に奉安の尊像は戦後復興の兆しがみえてきた頃のある朝出現された 由緒こそ定かでないが、お心安らかなそのお顔はいつしか「幸せ」を呼ぶ地蔵尊としてしたしまれている。

この二体の地蔵尊は地元天ニ町会をはじめ近隣地域の大切な守護尊としてその繁栄を見守っています 毎年九月一日には宝前で供養会が営まれます。

天ニ町会 天ニ町会リサイクル推進委員一同

なるほど、お地蔵さまを建立した意図もわかりやすいし、その後にこの町会を戦災から守ってくれたお地蔵さまということで、具体的なご利益をこの町会の人たちは感じているのだ。そのこともあって、今でも大切に祀られているわけだが、左側の由緒がよくわかっていない、ある朝に突然現れたお地蔵さまも大切に拝まれているのはなんだかいいことのように思える。それにしても、どのようにして、どこに突然現れたのだろう。気になるところだ。

よく見るとお米が供えられたりしていた、いろいろな人たちがいろいろなスタイルでお参りをしているのがよくわかる。

湯島方面へ行かれることがあれば、ぜひこのお地蔵さまをお参りしてほしい。

この界隈は坂と路地が多いのだが、そんな場所こそ、お地蔵さんが似合うように思う。お散歩がてらにぜひ!
 
 

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【引っ越しのお知らせ】
当サイトにて連載中の「お地蔵さんぽ」は、ピースオブケイクの運営するサイト「note」への引っ越しすることになりました。

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この連載について

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人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。