トーキョー・レガシー・ワンダーランド【vol.49】三朝庵@早稲田

巨大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。
懐かしくて心惹かれる、うるわしの東京アーカイブズ。

一時期、早稲田に住んでいたが、早稲田に住む前から、知っていた三朝庵というおそば屋さん。穴八幡の斜め前、早稲田通り沿いにお店があった。

「元近衛騎兵連隊御用」「元大隈家御用」という看板。なんだかものすごいお店のようなかんじ。

暖簾には「早稲田最老舗」の文字。とても歴史があるお店で、ここ発祥というメニューがあった。
まずは、入り口すぐの場所で食券を買うシステム。券売機ではなく、初老のご婦人から購入する。

いやぁ、この食券がいいねぇ。というわけで、諸説あるが、「カレー南蛮」はここが発祥だそうだ。

普通においしいカレー南蛮で、何度かいただいた。とくに冬は体が温まるね。

あと、こちら。

諸説あるが、カツ丼もこちらのお店が発祥だとか。カツはけっこう分厚くて食べ応えがあった。
カレー南蛮にしろカツ丼にしても、何か特徴的なことがあるのかといえば、ごくごく平均的な味。
ああ、発祥というのそういうことかというのがよくわかった。
この味をどこも真似ていくかわけだから、最終的に発祥の店の味は全体からすればごくごく平均的なものになるのだろう。
でも、それが妙に心地よくて、僕は何度か足を運んだ。

外苑前のイチョウ並木を撮影した日、早稲田まで歩いた。久しぶりに三朝庵にでも行ってみようかと思ったら、店頭にはこんな貼り紙があった。

そうか、閉店したのか。初代は朝治郎という人だったんだ。100年以上もここで営業していたんだね。

ちょっとさびしい気持ちになりながら高田馬場駅まで早稲田通りを歩いた。そういえば、早稲田駅からすぐの夏目坂にあった「秀英」っていうお店があって、そこもよく行っていたけど、閉店したし、それから、稲穂というラーメン店も閉店していた。

こうしてどんどん閉店していくんだね。さびしい。
 

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この連載について

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巨大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。