お地蔵さんぽ【vol.49】名もなき地蔵@山吹町

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

最初に書いた本はビジネス書だった。
本名で書いたのだけれど、これがけっこう売れて、僕はビジネスライターと呼ばれるようになっていた。
それが30歳の時のこと。
30代は下関マグロというペンネームでエロ本などにコラムを書いていたので、エロライターとも呼ばれていた。
本も何冊か下関マグロ名義で出した。45歳を過ぎた頃から散歩に関する原稿をたのまれることが増え、いつの間にか散歩ライターになっていた。
なぜこんなことになるのかといえば、僕は受注ライターだからだ。発注されればほぼ断ることはなく、なんでも書く。なぜかといえば、仕事だからなんだね、これが。

50代になると食に関する原稿をネットで書くことが多くなり、テレビなどでコメントをすると、僕の肩書きはグルメライターになっていた。

散歩の途中でMXテレビの「5時に夢中!」のADから電話を受けた。
それはグルメライターとしての出演依頼だった。ほんの数年前、僕は同じ「5時に夢中!」に風俗ライターとして出演している。
出演依頼を受けたときにに風俗を取材したことはあるけれど、それはずいぶん前だからと断ったのだけれど、それでもいいからというので、出演することにした。
それからそんなに経過していないのに今度はグルメライターだ。内容は酒好きの自分が秋刀魚のワタの美味しい食べ方をレクチャーするというものだ。ロケ場所は新宿区山吹町にある「すみれ」という居酒屋。

いやぁ、実にいい店舗ファサードだね。
かつて、ここからほど近い早稲田鶴巻町に住んでいたことがあるけれど、この店のことはまったく知らなかったよ。とはいえ、約束の時間の1時間も前に到着したので、近所を歩き回り、スマホで魔法同盟というゲームをすることにした。

これはハリーポッターの物語を位置情報ゲームにしたもので、宿屋で呪文エネルギーを補給し、ファウンダブルと呼ばれるモンスターを集めたりするゲームだ。ポケモンGOと同じようなもので、ハリポタGOと呼ぶ人もいる。と、「お地蔵さま」という名前の宿屋があるのを見つけた。すぐにイングレスを立ち上げる。

魔法同盟やポケモンGOをつくった会社が最初に開発したのがイングレスだ。イングレスは初期の頃、ユーザーが身近にあるユニークなスポットや歴史的なスポットをポータルとして申請した。僕が始めた頃は、まだポータルの申請はできたけれど、だいたいの場所はすでに申請されていたのだ。こうして、後のポケモンGOや魔法同盟の下地になるポータルがそろったわけだ。実にうまいやり方だね。お地蔵さまもポータルとなっているケースが多い。

いちばん好きなお地蔵さまは、道ばたにいらっしゃる名もないお地蔵さまなのだが、僕がそういうものを見つけられるのは、イングレスのポータルになっているからで、なかなか普通に歩いていてはわからないことが多い。しかし、ポータルがあるのはわかっても実物がどこにあるのかわからないことが多い。30メートルくらいの場所にあるはずだけど、なかなか見つからない。

行ったり来たりしていると、「マグロさん」と呼ぶ声が聞こえた。「5時に夢中!」のスタッフだった。「すみれ」まで案内されて、少し待っていてくださいとのこと。ほどなく、レポーターのガウちゃんがやってきた。以前、風俗ライターとして出演したときもガウちゃんがレポーターだったなぁ。

ほどなく、撮影スタート。なんの違和感もなく、かつての風俗ライターがグルメライターとしてトークし、終了。スタッフさえ、この人、以前は風俗ライターだったよなんてことを思うわけではなかった。なので、視聴者はもっと思わないよね。
あっというまに収録が終わり、開放された僕は、再びお地蔵さまを探し始めた。

あった。あれだけ。ちゃんと囲まれている。

お地蔵さまというよりは、インドの神様のようだ。割れた石を丁寧につなぎ合わせてあるね。
お地蔵さまはこれだけではなかった。近くにもうひとつお地蔵さまポータルがある。

お社があるね。近づいてよく見てみよう。

かなり新しいもののようだ。名前などはない。気になるのは隣に台座だけが残っているものがあること。イングレスのポータルの画像によれば岩の塊のようなものがそこにはあったようだ。今は撤去されているようだ。

さらにポータルではないが、こんなものを発見。

これが何かはよくわからないが、花やお水が供えられているところを見ると、大事にされているのだということはわかる。手を合わせて拝んでみると、なんだか心が穏やかになる。

ここ山吹町には、今でも信仰の対象となる素朴なものがあるんだね。
スマホのゲームのおかげでわかったよ。
さて、最後に魔法同盟のフレンド募集中。 

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この連載について

初回を読む
人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。