ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。
懐かしくて心惹かれる、うるわしの東京アーカイブズ。
45歳のとき、糖尿病だと診断され、糖尿病に関する本をあれこれ読んだ。
そのなかに、糖尿病の人は何をどう食べればいいかみたいな本があって、たとえば、カレーライスなら、サラダをつけて、ご飯は少し残す、みたいなことが書いてあった。
で、いちばんいいのは、チャンポンで、スープさえ飲まなければ、全部食べてもいいとあった。肉、野菜などバランスが取れているのだそうだ。
中華料理はだいたい、野菜が多く摂れて、肉などタンパク質も摂れるので、その本では推奨されていた。
糖尿病になって以降、仕事が激減した。四谷に住んでいたけれど、家賃が払えず、早稲田の家賃が安いアパートに引っ越した。
近所には、中華料理店、いわゆる町中華が多かった。昼によく行ったのが、早稲田通りからちょっと入った「北京」というお店。日替わりのランチ定食などをやっていた。
新目白通りにある大王ラーメンには昼も夜もよく行った。日曜日の昼間は早大通りの五十番へ行った。平日は「メルシー」などもよく行った。
そして、多華だ。
早大通りにある多華は頻繁ではないが、たまに行っていた。カウンターだけのお店で、僕が行き始めた頃は、ご夫婦で切り盛りされていた。
何度か行き、ご主人と言葉を交わそうかと、思ったこともあったが、結局、その後、富久町に引っ越すまでついに会話はしなかった。
ただ、料理はおいしかったね。
何を食べてもハズレはなかった。とはいえ、何を食べたかは具体的によく覚えていない。
はっきりと記憶にあるのはかた焼きそばを注文したときのこと。
普通の中華麺を油に投入して、いっきに揚げ麺をつくっていたことだ。
買い置いた麺ではなく、その場で揚げるのだと驚いた。
ご主人はゴルフが好きで、店のテレビではゴルフ番組がよくかかっていたし、雑誌の棚にはゴルフ雑誌があった。
どこかのレストランで働いているという息子さんがいっときお店で働いていたこともあった。
早稲田から富久町に引っ越したあと、たまたま早稲田に行く用事があって、多華に行こうかと思ったら、もう店はなかった。で、今回、多華の場所にはなにがあるのか見に行ってきた。
黄色いビルの1階。
3軒の店がある。右側が不動産屋さん、真ん中がお寿司屋さん、そして、左が多華ではなく、なんと、町中華跡地あるあるで、ラーメン店になっていた。
行列ができているので、近づいてカメラを向けることができず、看板だけ撮影してきた。
とても流行っているラーメン店だ。
そうそう、同じ並びにある喫茶店があったなぁ。
「香磁」というお店。昔とまったく変わらずに存在した。表の人形も色は褪せたけど、同じだね。お昼はナポリタンがサービスメニューで、よく食べていた。ハッ、しまった。『ぶらナポ』で取材に来ればよかった。すっかり忘れてたよ。
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当サイトにて連載中の「トーキョー・レガシー・ワンダーランド」は、ピースオブケイクの運営するサイト「note」への引っ越しすることになりました。
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この連載について | |
初回を読む |
巨大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。 ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。 真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。 |
【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。