お地蔵さんぽ【vol.50】西念寺の身代わり地蔵@根岸

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

名もないお地蔵さまがあれば、そのストーリーがきちんとしているお地蔵さまもいらっしゃる。こちら、根岸の西念寺にある身代わり地蔵は、かなりのネームバリューがある。

西念寺のホームページによれば、古い伊勢音頭の歌詞に次のようにあると記されていた。

「花は上野か 染井の堤 今日か明日(飛鳥山)へ 日暮し(日暮里)の 君に逢ふ路(王子)の狐 鼻赤 いろはの女郎衆に招かれて うつらうつらと 抱いて寝ぎし(根岸)の身代り地蔵を横に見て 吉原五町廻れば 引け四つ過ぎには 間夫の客 上りゃんせ」

「抱いて根岸の身代わり地蔵」というフレーズはなんだか艶っぽかったりする。
さらに、このお地蔵さま、お地蔵さまあるあるというか、世の中への出方がすごい。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の時代、お通(つう)というスーパーレディがいて、彼女がお地蔵さまを発見するのだ。

呉竹の根岸の里といわれていた、閑静な土地に遊んだ日のこと、通りがかりの稲田の水がまばゆいばかりの光明を発しているのを見たお通、これは不可思議無量のことと、じっと近寄れば一体の地蔵尊が横たわっている。その尊さに深く感じ入って、急ぎ拾い上げ抱きしめて、供の者に命じ、ただちにその場所に草庵を結ばせ、丁重にお祀りした。

 と、ここまでが第一弾。その14年後、都から奥州へ布教の旅をしていた的山上人が、この地を通りかかると、なんともいえぬ尊いお顔をした地蔵尊が、いまにも朽ち果てそうな草庵に祀られているのを見て、深く心を動かされ、一心に祈った。そして、的山上人はこのお地蔵さまを「身代わり地蔵尊」としてあらためて祀ったのだそうだ。そして、西念寺を開山したという。それが寛永七(1630)年のことと寺伝に残されているのだそうだ。

普通は先にお寺があり、そこのお地蔵さまがいらっしゃったりするのに、お地蔵さまが見つかったことで、お寺が開かれたというのが、なんともすごい。

あらためて、その表情を見れば、なんとも慈悲深い感じがする。

全身ではなく、胸から上だけという御姿も、なんだか歴史を感じさせる。

思わず手を合わせた。
 
 

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この連載について

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人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。