「むっつりスケベのあなたにお願いがあります」「ひとりで寂しい思いをしている貴方!」など、私のパソコンには様々なタイトルのメールが勝手に送られてくる。
その内容は、「いつもいやらしい妄想で頭いっぱいなんですよね? 脳内でアレコレするよりも、私でその妄想を実現してみませんか? あ、私は○田○子といいます。
34歳、ヒマを持て余している主婦です。
そんな立場ですので、時間はたっぷりとあります。
どうでしょうか? むっつりスケベの貴方の妄想を、私で実践してみませんか? 返事待っていますね」というものである。
この文面の最後に、サイトアドレスが載っている。
これをクリックすると、見知らぬ男女と出会えるSNSサイトに飛ぶ。
ここはいわゆる出会い系サイトである。
みなさんのところにも、ものすごい数の迷惑メールがやってきているのではないだろうか。
削除しても、削除しても次々に送られてくるメールにうんざりする人も多いはず。
それもそのはずである。
最近の総務省のデータでも、日本国内の全メールの約7割が迷惑メールという統計を発表している。
これらの迷惑メールのほとんどが出会い系サイトへの誘いなのである。
出会い系サイトって、本当に出会えるの?
出会い系サイトで、本当に異性と出会えるものなのか? 私はこれを確かめるために、迷惑メールのある出会い系サイトに登録してみた。
私はそのサイトにメールアドレスを書き込み、ニックネームを「ブンメイ」にした。
ここでのシステムを紹介すると、もしこのサイトに載る私のプロフィールを見て、私のことを気に行ってくれた女性がいれば、その人からメッセージが送られる。
それは、この出会い系サイト内に設置されている私専用のメッセージボックスにそれが届くことになる。
そして、そのメッセージが届いたことを知らせるメールが私のパソコンにくるという。
登録して1時間もしないうちに、次々と見知らぬ女性たちからメッセージが到着したことを知らせるメールが、パソコンに届く。
通常のSNSサイトなら、登録してからじっくりと時間をかけて、友達が増えていくことになるが、このサイトでは1時間もしないうちに「友達になりましょう」「交際しましょう」という連絡が女性たちから10件以上も入る。
1日で数十件、1週間ほどたつと、メッセージは軽く100通は越えてしまっていた。
27歳女性からは、かわいい顔の写真つきのメールで「ヒマしていますか? わたし…かなりヒマしちゃっています(*_*)もう」といったものや、34歳の妖艶な風貌な女性から「私は貴方の事しか考えていません。
貴方にだけ逢えればいいです」といった内容である。
ここのシステムでは、ここではポイント制になっており、1ポイント10円である。
メッセージを見るのは無料だが、それに返信すると40ポイントかかる。
つまり400円のお金がかかる。
それでメールをしなかったわけだが、無視していると、メールの内容はますますカゲキになる。
「どうしてメールのお返事をくれないのですか! わたしはあなたに、体をもてあそんでほしいだけなんです。
お金はいりません。
ただ会ってください!」
「ブンメイさん、お願い! 私のエッチの先生になって下さい。
フェラは嫌いかなぁ? いっぱいお口に含みながら……」
とにかく、彼女らは私をエッチな人間と決めつけて、会いたいといってくる。
そこで私は、送られてきた写真の中で自分の好みのタイプに近い女性に返信をしてみることにした。
返信するには、40ポイントかかるが、入会の特典として100ポイントもらっていたので、お金をかけずにメールができる。
「はじめまして、メッセージありがとうございます。
かわいい方ですね。
よろしくお願いします」
私が返事を送ると、すぐにその女性から返事が返ってくる。
メッセージには「あなたのメールアドレスか電話番号を知りたい。
そして、直接にお話したい」という内容が書かれているので、自分のメールアドレスを書いて返事をだそうと、サイト画面の返信のボタンを押した。
しかしそこには「ポイント不足のため送れません」という表示がでる。
まだ60ポイントあるはずだ、と思って利用ポイント表をみると、自分のアドレスをおしえてメールを送るには、400ポイントが必要とある。
4000円もかかる! たかだか、自分のメールアドレスを相手に教えるに、4000円を払わなければならないとは、ちょっと高すぎやしないか?
ポイントを購入するには、クレジットカードや、銀行振り込みで購入できる。
高いとは思ったが、万が一にでも異性と会える可能性があるならと思い、私は銀行振り込みで1万円分(1000ポイント)のポイントを買ってみた。
しかしその後も、自分のメールを教えたにもかかわらず、サイト上でのメールのやりとりが続き、そのうちに、この女性はサイトを退会した。
また違う女性と連絡を取っているうちにポイントはなくなるといった具合で、結局、誰とも会えずじまいだった。
【著者】
多田文明(ただ・ふみあき)
ルポライター、キャッチセールス評論家、悪質商法コラムニスト。
1965年北海道生まれ。日本大学法学部卒。雑誌「ダ・カーポ」にて「誘われてフラフラ」の連載を担当。2週間に1度は勧誘されるという経験を生かしてキャッチセールス評論家になる。これまでに街頭からのキャッチセールス、アポイントメントセールなどの潜入は100ヵ所以上。キャッチセールスのみならず、詐欺・悪質商法、ネットを通じたサイドビジネスに精通する。
著書『ついていったら、こうなった』『なぜ、詐欺師の話に耳を傾けてしまうのか?』(以上、彩図社)、『クリックしたら、こうなった』(メディアファクトリー)、『崖っぷち「自己啓発修行」突撃記』(中公新書ラクレ)、『ついていったら、だまされる』(イースト・プレス)など。
電子書籍『悪徳商法ハメさせ記 新興詐欺との飽くなき闘争』『人を操るブラック心理術 「Yes」と言わせる交渉の鉄則32』など。
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