お地蔵さんぽ【vol.51】名もなき地蔵@中十条

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

この連載の初回掲載は2017年6月29日になっている。とはいえ、それ以前より、お地蔵さまには興味があったのでカメラを向けていた。今回紹介したいのは2016年5月13日に撮影したものだ。この日の午前9時、赤羽駅の改札でオールアバウトの社員2名と待ち合わせをした。ひとりは紙媒体の編集から途中入社した中堅の男性社員で、もうひとりは新卒で入社したばかりの女性社員だった。僕たち3人が集まったのは
赤羽-池袋間を結ぶ「赤羽線」って何だ!? ナゾ解き散歩
という記事を書くためだった。まずは、赤羽で朝活。この時期は昼間からではなく、朝から飲むという朝活が流行っていて、若い女性なども飲み屋界隈をたくさん歩いていた。赤羽線を歩こうという企画を出したのは、女性社員で、清野とおるの『北区赤羽』を持ってきていて、赤羽について熱く語っていた。
僕たちは「まるます家」という有名な居酒屋で酒を飲み、ほろ酔いで赤羽線を歩き始めた。

赤羽線は高架になっていて、その下が「稲付遊歩道」になっている。歩行者専用道で歩きやすい。遊歩道はしばしば、かつて川があった場所だ。ここもかつて稲付川という川があったが、今は暗渠になっている。

その先にあるのが清水坂公園。5月なので、鯉のぼりも見えた。

広い公園からさらに線路沿いを歩くと小さな児童遊園があった。芝生のある大きな公園に人々はいて、ここは誰もいなかった。その一角にお地蔵さまがいらっしゃった。とても小さなお地蔵さまだが、花などが供えられてよくお世話されているのがわかる。

赤い前掛けには「おん かかか びさんまえい そわか」とある。お地蔵さまの真言、お祈りするときのに唱えるものだね。このときはわからなかったけれど、いろいろなお地蔵さまを見てきたので、今はわかる。

そのお地蔵さまの近くに清水坂の説明書きがあった。

十条の台地から稲付の低地に下る岩槻街道(旧日光御成道)の坂である。昔はけわしく長い坂道だったので十条の長坂などとも呼ばれた。切り通しの崖からはたえず清水が湧き出ていたので、清水坂の名が付けられた。現在は崖が削りとられて、その跡に児童遊園が設けられているが、そこは貝塚遺跡でもあった。

かつてこのあたりはけっこうな人通りがあったのかもしれない。そこにお地蔵さまもいらっしゃったのだろうか。景色の変化をお地蔵さまはどう見ているのか、知る由もなかった。

この散歩は、赤羽駅から池袋駅まで歩いた。なかなか楽しい散歩だったなぁ。
 
 

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【引っ越しのお知らせ】
当サイトにて連載中の「お地蔵さんぽ」は、ピースオブケイクの運営するサイト「note」への引っ越しすることになりました。

全話が見られるのはnoteだけで、当サイトでの掲載はピックアップとして1~5話と直近の5話の掲載を予定しております。
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この連載について

初回を読む
人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。