お地蔵さんぽ【vol.41】愛全地蔵尊@神保町

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

愛全地蔵尊@神保町

神保町に「ぶん華」という町中華がある。店頭に中華鍋が掲げられている。
営業中は中華鍋は表向きになり、そこには「創業昭和25年)と書かれている。
準備中になると中華鍋が伏せられる。この店のおすすめは「ぶん華ランチ」。
チャーハンにチンジャオロースをかけたものだ。
僕がいただいたのは「カレーチャーハン」。
チャーハンにカレーがかかっている。
ここはデフォルトで量が多いので、少な目でお願いしたのだけれど、それでも食べきれなかった。

その並び、ビルとビルの間にあるお地蔵さまがいらっしゃる。

向かい側にある公園の名前が愛全公園。お地蔵さんの名前が愛全地蔵尊。

お名前がわかりやすく書かれている。
お参りをして、お顔の写真を撮らせていただいた。

かなり時代が経過しているように思う。

舌代(ぜつだい)があり、そこにこの安全地蔵尊のことが書かれている。

舌代
此お地蔵様は京都熊野郡久美浜町字古神谷の本願寺より明治四十三の秋東洋幼稚園と東洋家政女学校の校長岸辺福雄先生がお寺に懇願の上譲り受け当地に持って来られたのであります 
年々の供要は湯島の霊雲寺の住職に依てお祭りを致し毎日礼拝されました 作者は不明ですが鎌倉時代のものと申されて居ります

大正十二年の大震災で十数個はこわれましたのをつぎ合わせました
岸辺先生はカバン地蔵と名付ましたが誰云ふとなく身代り地蔵子育地蔵とか火消し地蔵と申されて居ります
区割整理の為当町でお守する事になり大震災大東亜戦又は事故死その他各位の方々の霊をおまつりし
年々供要を兼ねお祭りをし愛全地蔵と霊雲寺の和尚さんは名付て裁き今度皇太子御成婚記念としお堂新築致したのであります

昭和三十四年四月吉日 愛全地蔵講

京都のお寺にあったお地蔵さまを秋東洋幼稚園と東洋家政女学校の校長であった岸辺福雄先生がお寺に懇願して、譲り受けてきたそうだ。
作者は不明だが、つくられたのは鎌倉時代とのこと。
やはりけっこう古いものなのだね。

「愛全地蔵尊由来の栞」というのがあった。こういうのが置かれているのは初めてだなぁ。

一冊百円。
賽銭箱に入れるようにとのこと。

百円を入れて、1冊いただく。中にはお守りのお札も入っている。
栞には、岸辺福雄氏の文章が掲載されている。タイトルは「カバン地蔵の由来」とあった。
日付は昭和33年8月20日。
署名の横に七十六歳とあった。
このお地蔵さま、もともとはカバン地蔵と呼ばれていた。
その理由は右肩から左脇にカバンをかけていたからだそうだ。
カバンの中には園児や生徒、卒業生や教師、読経してくれた和尚さんたちの写真が入っていたそうだ。

また、こちらのお地蔵さまは関東大震災のとき、10数片に割れてしまったそうだ。
それをつなぎ合わせて、再び祀ったそうだ。

岸辺福雄氏は代々木上原へ引っ越すときにこのお地蔵さまもいっしょに持って行こうかと思ったのだが、引っ越しの日に卒業生がここにお地蔵さまを置いておいてとお願いされる夢を見て、置いていくことに決めたそうだ。

さらに、山縣重市氏が愛全地蔵尊になったいきさつを追記している。
人目に触れない場所にあった地蔵さまだが、町の有志により、昭和23年に今の場所に移されたそうだ。その際に愛全地蔵尊という名前になったとのこと。
栞とともにいっしょに入っていたお守りのお札は財布の中に入れて、ときどき拝もうかと思っている。
 
 

BACK  NEXT

 
 
【引っ越しのお知らせ】
当サイトにて連載中の「お地蔵さんぽ」は、ピースオブケイクの運営するサイト「note」への引っ越しすることになりました。

全話が見られるのはnoteだけで、当サイトでの掲載はピックアップとして1~5話と直近の5話の掲載を予定しております。
引き続いてのご愛読、よろしくお願いいたします!

この連載について

初回を読む
人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。