『時代を駆け抜けた優駿たちのルーツを辿る旅 名馬9頭を育んだ生産現場の物語』河村清明


ディープインパクト、オルフェーヴル、サイレンススズカ…。
栄光をつかみ、歴史にその名を刻んだスーパーホースは、いかにして育て上げられたのか?
最強馬の育成に人生を捧げたホースマンたちの知られざるドラマ。

※本書は、雑誌「優駿」(中央競馬PRセンター)2015年3月号~12月号に掲載された「未来に語り継ぎたい名馬BEST100」、同誌2014年8月号に掲載された「夏の場産地を巡る」を再編集しました。

【本文より】
馬産地を訪ねるようになって、およそ20年が経つ。
その間、さまざまな牧場の栄枯盛衰を見つめながら、ずっと考えてきたことがある。
「名馬を授かるのは偶然なのか、それとも必然なのか」
答の出ない問いだとわかってはいても、名馬を授かった牧場は当たり前だが注目を集め、活況に沸く。その一方で、主に経済的な理由から、馬産をやめてしまう牧場がある。
生じる差異に明確な理由はあるのかどうか、抗いようのない流れというしかないのか、そこを見極めたいと思った。だからいくつもの牧場を訪ねては、質問を重ねてきたのだ。
本書に収録したのは、そうした記録の一部である。
これからお読みいただく一文が、先の問いかけの、ほんのわずかであっても答になっていれば、筆者としては望外の喜びと言うしかない。

【内容】
まえがき 名馬の誕生は偶然か、必然か
ノーザンファーム――ディープインパクトが生まれた地
 前を向く姿勢が招いた幸運
 最高の種牡馬を手に入れ配合相手にも最高を求める
 特別な生命力を感じる母ウインドインハーヘア
 今へと続く黄金期を史上最強馬と共に歩み始める
 追記――大いなる変容体
 ノーザンファームの馬はなぜ走るのか
 躍進の原動力
白老ファーム――オルフェーヴルが生まれた地
 長く育んできた血の結晶
 新生・白老ファームが船出し同じ年にステイゴールドが誕生
 オルフェーヴルに伝わったノーザンテーストの成長力
稲葉牧場――オグリキャップが生まれた地
 何かが舞い降りた場所
 若き日の現場主の熱意からオグリ兄妹の物語は始まった
 嬉しいけれども寂しい、そんな感じがした
カントリー牧場――ウオッカが生まれた地
 オーナーブリーダーの「底力」
 強い信念とたしかな実行力で驚異的な成果を残した先代
 長い苦境の時代を経て3度目のダービー制覇
 二つの意味を見いだせるウオッカを出した配合
稲原牧場――サイレンススズカが生まれた地
 受け継がれた挑戦者の信条
 先代の挑戦は結果をもたらしその信条は息子の決断にも繋がる
 一番の思い出として残る最後の勝利となった毎日王冠
早田牧場新冠支場――ナリタブライアンが生まれた地
 時代を駆けた競馬界の昇竜
 複数の幸運を味方に付けて挑戦を開始した若きホースマン
 ノーザンダンサーへの思いが巨大な幸運をもたらす
 維持しているように見えた勢い。襲い掛かってきた栄枯盛衰の波
シンボリ牧場――シンボリルドルフが生まれた地
 戦後競馬を牽引した名門
 三元育成の第1期生がその成果を世に知らしめる
 自分で方法を見つけようという「シンボリ精神」は変わらない
長浜牧場――トウカイテイオーが生まれた地
 トウカイテイオーと奇跡
 4度もの骨折を経験しそのうち3度復活を果たした
 前脚が上がるフォームは脚にかかる衝撃も大きかった
 休み明けであろうとなかろうといつも走りすぎてしまうタイプ
 追記――長浜牧場のおばあちゃん
社台ファーム――ダイワスカーレットが生まれた地
 時を経て大輪を咲かせた一粒の種
 種牡馬として期待し購入した1歳のノーザンダンサー産駒
 種牡馬の持つポテンシャルを最大限に引き出す素養

【著者】
河村清明(かわむら・きよあき)
山口県出身。北海道大学文学部国文科専攻を卒業後、株式会社リクルートに入社。1996年に同社を退社したのち、執筆活動を始める。同年、「優駿エッセイ賞」を受賞。
著書『馬産地ビジネス』『JRAディープ・インサイド』『馬産地放浪記』(以上、イースト・プレス)、『三度怒った競馬の神様』(二見書房)、『ウオッカの背中』(東邦出版)、『ウイニング・チケット』(原作、講談社)などがある。
電子書籍『ミスター・ジャパンカップと呼ばれた男 競馬国際化の礎を作り上げた「異端」の挑戦』『競馬 衝撃の敗戦列伝 敗北を糧に頂点を極めた名馬たち』『競馬 衝撃の敗戦列伝2 運命を分けた一戦の知られざる真実』『ウオッカvsダイワスカーレット 天皇賞 運命の15分と二人の厩務員』『JRAディープ・インサイド 主催者が語る日本競馬の未来』『超サバイバル時代の馬産地ビジネス 知られざる競馬業界の「裏側」』、『いのちを繋ぐ馬産地の物語 旅立つサラブレッドの原風景』(共著)など。
競馬関連の著作について業界の内外を問わず高い評価を得ている。

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