【書籍紹介】『夏の終わりと君の破片』(ネット文庫星の砂)界達かたる


八月の終わり、ひまわりを食べる少女に出逢った。
それが私の、青春の終焉でもあった。

【あらすじ】
第16回星の砂賞【優秀賞】受賞作品

こぢんまりと咲かせた笑み。
方言混じりの、からかいにも似た問いかけ。

十年前の夏、ここには、ひまわりを食べる少女がいた。

将来への不安、期待、あるいは焦燥感。
夢見がちな日々に現れた夏の幻想は、皮肉にも私に、避けようのない現実を直視させる。

ひと夏の不思議な邂逅を綴った、現代青春ファンタジー。

【編集部より】
三田誠広先生を特別審査員にお招きし開催した小説賞『第16回星の砂賞』にて、最高位である「優秀賞」を受賞した本作。

ボーイ・ミーツ・ガールの体ではじまる物語はしかし、どこか歪で、グロテスクで……それでも読み終えたとき、本作は「青春小説」だと感じました。
夏という季節の持つ儚さ、物悲しさを覚え、胸の奥にじん、と響く珠玉の一作です。ぜひご一読ください。

【本文より】
 彼女に、ひまわりを食べる少女に出会ったのは――高校最後の夏休みだった。

 八月二十七日、私は山奥にあるひまわり畑を訪れていた。本来ならうだるような暑さも忘れるほど見入る光景だが、その日は違った。
「むしゃむしゃ」と、畑の端っこでひまわりを貪っている影を見つけたからだ。
 広大に咲き渡る花々に似た、鮮やかな金髪を持つ少女だった。当時私は一介の男子高校生に過ぎず、彼女のような髪を持つ者を目にするのは初めてだった。加えて、一心不乱にひまわりを頬張っている彼女の姿は、歪な滑稽さが私を誘っているように感じられた。

【著者】
界達かたる(かいたつ・かたる)
1996年生まれ。熊本県荒尾市出身。
中学生の頃から創作活動と小説新人賞への投稿を開始。高校時代に講談社メフィスト賞などで最終候補となり、大学在学中に5つの小説賞を受賞。短編小説「少女から刺されたナイフの傷は浅い」や長編小説「Jに羽根はいらない」などを発表しデビュー。2018年に第7回講談社ラノベチャレンジカップ<優秀賞>を受賞し、自身初のライトノベルとなる「姫ゴトノ色 ―The Eyes of Blood―」を上梓。また、九州芸術祭文学賞作品集にて純文学小説「車中泊」が収録されるなど、その創作分野は多岐に渡っている。

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