お地蔵さんぽ【vol.42】傳蔵地蔵尊@西神田

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

傳蔵地蔵尊@西神田

人の名前がつけられたお地蔵さまというのもけっこういらっしゃる。
以前書いた浅草の半助地蔵尊もそのひとつだ。
今回ご紹介する西神田にある傳蔵(でんぞう)地蔵尊も人の名前がついたお地蔵さまだ。
場所は外神田。
日本橋川にかかる橋のたもとにお地蔵さまはいらっしゃる。

上には首都高速道路が走り、下は日本橋川。ここにかかる橋が堀留橋。

江戸時代、日本橋川は神田川を開削するときに埋め立てられたもので、堀留という名前もそこからきているのだそうだ。江戸の町というのはそういう土木工事を常に続けてきている。今日もそうだ。
この橋のたもとにお地蔵さまはいらっしゃる。

2体のお地蔵さまがいらっしゃる。
なぜ2体なのかの説明はあとからするのだが、昔からこの場所にいらっしゃったのかというとそうではない。
最初は西神田の首都高の入ロあたりにいらっしゃったそうだ。
それがなぜここへ移動したのかと言えば、大正12年の関東大震災でこの橋が壊れてしまい、その修理を請け負った現場の責任者が「傳蔵」さんだった。
傳蔵さんは地蔵をここへ移し、工事の無事を祈願したのだそうだ。
工事はうまくいき、いつしか地蔵は傳蔵地蔵尊と呼ばれるようになったそうだ。
しかし、不届き者があるとき、このお地蔵さまを川に放り投げてしまったのだそうだ。
探したが、見つからず、仕方なく新しいお地蔵さまを地元の方々がつくったのだそうだ。
その後、川に放り込まれたお地蔵さまも発見され、2体がここに祀られるようになったんだとか。
なんともありがたいお地蔵さまだ。

この橋を渡るときは思わず手を合わせる。
この写真は2012年2月2日に撮影したものだ。この日僕は、昼前に新宿区富久町のマンションを出て、靖国通りを市ヶ谷方向へ歩き、神保町を抜けて、お茶の水大勝軒まで歩いている。
「特製もりそば」750円をいただいた。

この時期、僕はいろいろな大勝軒を食べ歩いていたけれど、ここが一番おいしいと通っていたのだ。

帰りは同じ道を通ってもなと思い、飯田橋方面から帰ろうかと思っていた時にこの傳蔵地蔵尊に遭遇したのだ。
以来、この場所にお地蔵さまがいらっしゃることを知って、何度かお参りをしたのだけれど、その後の写真は発見できなかった。

この原稿を書きながら久しぶりに傳蔵地蔵尊に会いたくなった。
 
 

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この連載について

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人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。