【書籍紹介】『いつか目覚める君、もう目覚めない僕』(ネット文庫星の砂)界達かたる


――僕が会話しているのは、彼女か、機械か。

【あらすじ】
意識不明の患者との会話を可能にする次世代型医療機器、『機械仕掛けの記憶(メモリア・エクス・マキナ)』通称MeM(メム)。
少年はMeMを使うことで、植物状態である幼馴染の少女・日々佳と会話することができていた。
しかし、彼女の記憶から弾き出される機械染みた言葉に、少年は少しずつ彼女への本当の想いを見失っていく……。

【芥川賞作家・三田誠広先生も激賞!】
冒頭のチャットが何度も反復されていく展開を見ると、世界が閉じているような危うさがあって、途中まではあまり期待していなかったのだが、後半に思いがけない展開があって、閉ざされていた世界の殻が割れ、次のレベルに到達する。その上昇するエネルギーと飛翔感が魅力的で、そこまで読むと、前半の単調なチャットの反復も、計算されたものだということがわかる。

【編集部より】
舞台はおそらく、いまよりもすこしだけ未来。『MeM』という意識のない患者とのテキストチャットを可能にしたコンピュータが開発されます。主人公の少年は『MeM』により事故に遭って眠り続けている幼馴染の少女と会話することができるようになりましたが……?
緻密に計算され張り巡らされた伏線、構成倒れにならない胸に訴えかける物語、それらを支えるたしかな文章力。小説コンテスト「第18回星の砂賞」で三田先生が激賞し、最高賞である「優秀賞」に選出されたのも納得の作品です。
読み終えたとき、たしかに心に残るものがあると思います。珠玉の物語をぜひお楽しみください!

【本文より】
「ねえ、時也君。夜にここ来たら、怒られるかな」
 小学五年生の冬。少女が訊く。黒い髪がまだ背中まで伸びていた頃で、話し始める時はいつも、おそるおそる相手の顔色をうかがうように微笑む。それが彼女の癖だった。

【著者】
1996年生まれ。熊本県荒尾市出身。
中学生の頃から創作活動と小説新人賞への投稿を開始。高校時代に講談社メフィスト賞などで最終候補となり、大学在学中に5つの小説賞を受賞。短編小説「少女から刺されたナイフの傷は浅い」や長編小説「Jに羽根はいらない」などを発表しデビュー。2018年に第7回講談社ラノベチャレンジカップ<優秀賞>を受賞し、自身初のライトノベルとなる「姫ゴトノ色 ―The Eyes of Blood―」を上梓。また、九州芸術祭文学賞作品集にて純文学小説「車中泊」が収録されるなど、その創作分野は多岐に渡っている。
 
 
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