『時鳥たちの宴』緋野晴子


ある日、三十歳になっている宮川遥のもとに、友人である大海豊から便りが届く。遥は、十年前に浮橋邸で催された「平安の夜の宴」を思い出し、胸が小さく疼いた。あの七日月夜に、どこからか現れて、暗い竹林をさまよっていた黄色い蛍火……。魂を誘うような、その光の舞いを脳裏に浮かべているうちに、遥の意識は遠ざかり、記憶の奥に広がる、甘やかで異質な風の吹く世界へと引きこまれていった。
そこは、大学の国文学科の浮橋ゼミ。男女八人のメンバー+教授に訪れた恋は、彼らに何を見せ、どんな痕跡を残したのか? そして、恋と愛の行方は?
青春純愛物語ではなく、男と女のドロドロ劇場でもない、一味違った恋愛小説。
浮橋教授による平安時代の風俗や恋愛観の話もあり、古典好きはもちろん、古典が苦手な人も大いに楽しめる。

【目次】
一 大海の便り
二 東風
三 若葉
四 浮橋
五 七日月夜
六 時鳥
七 皐月雨
八 恋歌
九 夏草
十 海辺の月読
十一 月夜茸
十二 萩の庵
十三 風花
十四 明けぐれの雪
十五 如月の梅
十六 それから
十七 蜜柑の丘

【著者】
緋野晴子(ひの・はるこ)
1955年3月生まれ愛知県新城市在住。日本ペンクラブ会員。日本文藝家協会会員。
〈著書〉
・『たった一つの抱擁』(2007年、文藝書房)
・『沙羅と明日香の夏』(2011年、リトル・ガリヴァー社、東愛知新聞社主催第21回ちぎり文学奨励賞受賞作)
・『青い鳥のロンド』(2017年、リトル・ガリヴァー社)
 

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