悪徳商法を行う業者は、ターゲットにした相手から多額の金をひっぱるために、まずどう料理するかを考える。
ある意味、ターゲットは彼らの食材である。
そこで業者が重要視するのは、相手が料理しやすい人間かどうかだ。
つまり、これから行う騙しの手口に、ひっかかりやすい人間かどうかを見極めようとする。
以前に「ついていったらこうなった」(フジテレビ)の番組スタッフが、番組リサーチをするため、悪質路上キャッチに誘われようと歩いたものの、誰からも声をかけられなかった。
なぜかというと、彼は180センチ以上の巨漢で、見た目にも怖い顔をしていたからである。
そこで次に、ひょろひょろとした若い男性スタッフに変えて歩かせると、ものの数分で声をかけられ、勧誘場所に連れて行かれた。
このように、見た目にも自分の手に負えない相手と思えば、声すらかけない。
また勧誘話をするうちに、契約までに一筋縄ではいきそうもないと思えば、さっと手を引くこともある。
というのも、彼らはいつも時短を考えており、見込みのない客に時間をかけるよりは、効率よく騙せる相手と話した方が、金を簡単に稼げると思っているからだ。
常に悪徳商法の業者らは、この客は騙せる見込みがあるのかないのか、あらゆる局面でチェックを入れてくる。
それゆえ、私は相手の業者に対して、「悪徳」の確信が得られるまでに、できるだけ騙されやすい人を演じるようにしている。
【著者】
多田文明(ただ・ふみあき)
ルポライター、キャッチセールス評論家、悪質商法コラムニスト。
1965年北海道生まれ。日本大学法学部卒。雑誌「ダ・カーポ」にて「誘われてフラフラ」の連載を担当。2週間に1度は勧誘されるという経験を生かしてキャッチセールス評論家になる。これまでに街頭からのキャッチセールス、アポイントメントセールなどの潜入は100ヵ所以上。キャッチセールスのみならず、詐欺・悪質商法、ネットを通じたサイドビジネスに精通する。
著書『ついていったら、こうなった』『なぜ、詐欺師の話に耳を傾けてしまうのか?』(以上、彩図社)、『クリックしたら、こうなった』(メディアファクトリー)、『崖っぷち「自己啓発修行」突撃記』(中公新書ラクレ)、『ついていったら、だまされる』(イースト・プレス)など。
電子書籍『悪徳商法ハメさせ記 新興詐欺との飽くなき闘争』『人を操るブラック心理術 「Yes」と言わせる交渉の鉄則32』など。
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