お地蔵さんぽ【vol.47】カンカン地蔵尊@浅草

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

先日、週刊誌の記者から「先日、マグロさんをテレビで見ましたよ。町中華を案内してましたよね」と言われた。
ええ、出てました、とお答えすると「やっぱり、マグロさんですよね、名前が違うから、アレッと思っちゃって」とのこと。
僕は自分からこういう名前で、こういう肩書きでなどと一切お願いしたことはなくて、先方の都合のいい方でと考えている。
それはテレビ出演だけではなく、原稿の執筆などでも同じだ。

先日も夕方のテレビ番組から出演依頼のメールがあった。浅草を案内する人として登場してほしいとのこと。
「日程さえ合えば大丈夫ですよ」と返信した。メールの宛名は下関マグロなんだけれど、そこに書かれている撮影したいネタというのが、僕が本名の増田剛己で書いている散歩の原稿ばかりなのだ。
もはやいろいろ混同しているんだなと思った。

打ち合わせをしたいというので、場所は家から近い喫茶店にしてもらった。
交通費を使いたくないのだ。
というのも、テレビ番組の場合、打ち合わせをしても番組が流れてしまうことはよくあること。
流れればギャラは出ない。
交通費分は赤字ということになる。どのくらいの割合で流れるのかと言えば、番組にもよるけれど、6~7割くらいは流れる。

というわけで、番組のディレクター氏と喫茶店で打ち合わせ。
当然のようにお昼時にしてもらって、昼飯をオーダーする。
これなら、流れても損はしないような気がするからだ。
もちろん、知っていることをあれこれお話しする。
やはり、奥浅草がおもろいんじゃないのかという話などをする中で、ふと「カンカン地蔵」のことを思い出した。
北千住にもある「カンカン地蔵」だ。
「カンカンと石で打って、剥がれ落ちたかけらを持って帰るとご利益があるというお地蔵さまがあるんですよ。カンカン地蔵というんですけどね。あまりにカンカン打つから、原型がなくなっているんですね」
「お参りしたことがはあるんですか?」と聞かれ、「実は何度か探したんですけど、まだ見つからなくて」。
その話を聞き、スマホで検索するディレクター氏。
スマホの画像を見ながら「想像以上でした」と笑っている。そう、ネットにある画像を見ると、お地蔵さまの原型をとどめていない、真っ白な塊なのだ。

あらかた打ち合わせも済んだので、せっかくだから少しお散歩しましょうか、と歩き始めた。
浅草エリアも言問通りを越えるとまったく違った雰囲気になるのだと言いながら、飲食店などの外観を見て回る。で、言問通りから浅草寺に入ると、あ、見つけた、「カンカン地蔵だ」。

こんなところにあったのかぁ。
「銭塚地蔵尊」という幡がたっている。
この前を何度も通ったけれど、まさかここだとは。
というのも、お地蔵さまの原型をとどめていないので、そのまま通り過ぎていたのだ。それがこちら。

赤い帽子をかぶっているのではなく、左側にある白いものが「カンカン地蔵」。

てっきり、いろいろなお地蔵さまがいらっしゃる浅草寺裏の一帯だと思って探していたのだが、ここだったのか。
もとは大日如来像だったそうなのだが、今はなんだかわからない。

しかし、こうして身を削って、我々にご利益を与えてくれるお地蔵さまってなんて素敵なんだろうか。

いやぁ、見つかってよかった。そう言いながらディレクター氏と別れた。これが9月のはじめの話だ。数日後、ディレクター氏からメールがきた。先日の話は9月ではなく10月の放送になったので、また改めてご相談させてくださいとのこと。

そして、この原稿を書いているのが10月31日。ああ、流れたのか。
カンカン叩かれ、削れていくような気分になった。
 
 

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【引っ越しのお知らせ】
当サイトにて連載中の「お地蔵さんぽ」は、ピースオブケイクの運営するサイト「note」への引っ越しすることになりました。

全話が見られるのはnoteだけで、当サイトでの掲載はピックアップとして1~5話と直近の5話の掲載を予定しております。
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この連載について

初回を読む
人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。