お地蔵さんぽ【vol.46】子育て地蔵@文京区関口

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

45才を境に僕の収入は減少していった。もともとフリーの身なので、仕事が来なければ収入は減る。そのため、家賃が払えなくなり、引っ越しを余儀なくされた。それまで住んでいた四谷から早稲田鶴巻町に引っ越したのが、2004年8月のことだ。

家賃は安くなり、生活が楽になったかといえば、実はそうはならなかった。家賃が安くなったよりもさらに収入は減っていったのだ。なので、けっして楽な経済状態ではなかった。

住まいのある早稲田鶴巻町から文京区にある江戸川橋地蔵通り商店街までよく歩いてきていた。漫画家の山田参助さんがこのあたりに住んでいたこともあって、よくご飯をいっしょに食べたりしたものだ。金はないけれど、楽しい毎日だった。

そして、この商店街のはじっこにいらっしゃるのが、子育て地蔵だ。

けっこうおしゃれな祠にお地蔵さまはいらっしゃる。

なにがおしゃれかって、こちらのガラスに書かれた説明文。

そこに書かれていたのは、ここにお地蔵さまがいらっしゃる理由だ。明治のはじめごろ、合出遡る。神田川が氾濫して、この地に流れ着いたのがこのお地蔵さまだそうだ。そういう話を聞くと、なにかしらのパワーをこの地にかんじる。流されてきたお地蔵さまはここの人たちが引き上げてお祀りするようになったんだそう。どこか数奇な運命を感じるお地蔵さまだ。お賽銭をあげ、よくお参りをして、ご尊顔を撮影させていただいた。

ちょっとふくよかなお地蔵さまだ。表情はとても柔和で、見ているだけでやさしい気持ちになれる。お地蔵さまは子供をしっかりかかえていらっしゃる。もともとは子育て地蔵尊なのだが、このお地蔵さまを祀るようになって、この地が震災や戦災もまぬがれたことから、火伏せ地蔵とも呼ばれているそうだ。

そう言う話を聞けば、とてもありがたいような気がしてさらにお参りしようと思ってしまう。

実際、僕が早稲田鶴巻町に住んでいたころは、このあたりを通り過ぎるときは、必ず手を合わせていた。そんなときに、いまの奥さんと知り合ったりもして、少しずつ、どん底からは這い上がってきたような気がする。

改めて今回うかがってみると、昔と変わらぬ笑顔で迎えてくれたお地蔵さまには、思わず手を合わせたわけだが、これまでいろいろなお地蔵さまを見てきて、再びここに戻ってくると、こちらのお地蔵さまの柔和な表情が素晴らしいということを感じさせてくれる。いつも身近にあるお地蔵さまだと気づかないことを、今回は気づかせてもらった。

とてもありがたいお地蔵さまだといっていいだろう。また足を運び、お参りをしなければと思った。みなさんもこのあたりに行かれたら、ぜひ手を合わせてみてほしい。きっと、気持ちが柔らかくなることだろうと思う。


 
 

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この連載について

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人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。