お地蔵さんぽ【vol.45】湘江庵@柳井市

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

湘江庵@柳井市

前回に続き、山口県柳井市内で見つけたお地蔵さんのお話。柳井という名前の由来になったものが、ここ湘江庵(しょうこうあん)というお寺の境内にあるそうだ。

山門の入り口のところにいらっしゃるこちらは、お地蔵さまなのかなんなのかがよくわからないが、ご挨拶をして、門をくぐることにした。

境内には柳と井戸があった。これが柳井市の発祥となったものだそうだ。
話はこうだ。

大分の長者の娘に般若姫(はんにゃひめ)というのがいらっしゃった。
橘豊日皇子(後の用明天皇)に召されて、京都に向かう途中、瀬戸内海で嵐に見舞われる。
柳井の入江で清水を求められたそうだ。それでここの井戸の水を差し上げたら、般若姫は喜ばれ、お礼にと中国の明帝大王から贈られた不老長寿の柳の楊枝を井戸のそばに差した。それが一夜のうちに大きな柳の木になったという。
この柳と井戸ということで、この地が柳井という名前になったそうだ。

どこか、美しい響きのある「柳井」がこういういきさつで生まれたのだというのも面白い話だ。

そして、境内にはお地蔵さまがいらっしゃった。
子供をかかえているので、子育て地蔵なのだろうか。とても柔和な顔つきながら、強い意志のようなものも感じるねぇ。こちらも心がやさしくなる。

説明書きがあった。
これはとてもわかりやすい文章だ。お地蔵さまは奈良時代から、庶民の救い主、とくに幼い子供の守護者として大ぜいの人に仰がれてきたという。お地蔵さまに手を合わせると、誰もが幼い日のことを思い出すとのこと。ああ、なるほど、そういうことってたしかにあるなぁ。さらに幼くして命を落としたりした魂を思うこと。「お地蔵さまは無心の合掌をささげ、無私の祈りを行ずるあなたを大悲のみ心をもって包み、やすらぎの中に生きるよろこびを与えてくださいます」とあった。
「やすらぎの中に生きるよろこび」というフレーズがなんとも刺さる。やはり僕もやすらぎの中に生きていたい。喧騒の中には生きたくないものね。
この文章を読んでいると、なんだかありがたいかんじがする。思わず手を合わせてみる。

東京のお地蔵さまを巡ることが多かったのだが、こうして地方にもいろいろなお地蔵さまがいらっしゃる。
もっといろいろな街を歩き、いろいろなお地蔵さまに会いたいと改めて思った。
 
 

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【引っ越しのお知らせ】
当サイトにて連載中の「お地蔵さんぽ」は、ピースオブケイクの運営するサイト「note」への引っ越しすることになりました。

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この連載について

初回を読む
人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。