お地蔵さんぽ【vol.31】お化け地蔵@橋場

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

お化け地蔵@橋場

台東区にある橋場という地名をご存じだろうか。
隅田川近くにあるところで、『義経記』や『源平盛衰記』にはこの場所に浮橋をかけたという記述もある、古くから歴史に登場する場所だ。

江戸時代には橋場の渡しがあった。
舟で隅田川を渡る様子が浮世絵にも描かれている。
そんな橋場へ続く商店街がアサヒ商店街だ。
かつては、賑わっていたのかもしれないが今は通る人もまばらだ。

アサヒ商店街からさらに土手通り方向へ行くと日の出商店街というのがある。
こちらは商店街と言っても今は商店などはほとんどなく、普通の民家や会社の入った小さなビルなどがあるだけだ。
土手通りまで出ると、そこは吉原大門という交差点がある。
逆に言えば吉原大門から隅田川の渡し場までの道が、日の出商店街であり、アサヒ商店街なのだ。
で、吉原側からきて、アサヒ商店街の終わった少し先に今回のお地蔵さまはいらっしゃる。

名前がなんともユニークで「お化け地蔵」。
しかもいらっしゃる場所もユニーク。最初、右の建物は普通の民家かと思っていたが近づいて表札を見ると、「松吟寺」とあった。お寺なのだ。

お寺以外の建物もなんとも、お化け地蔵のイメージを高めているように思う。
台東区教育委員会が平成11年に建てた説明板があった。

これによれば、お化け地蔵の名前の由来は2つ。
ひとつは大きな笠をかぶっていたが、その向きが変わったというもの。
もうひとつは3メートルという背の高さによるものだそうだ。
そのほかの伝承もあるようだが、それは省かれている。
さらに、この辺りは、室町時代は総泉寺という寺の境内であったそうだ。
その門前一帯を浅茅ケ原といい、明治40年に刊行された『東京名所図会』には「浅茅ヶ原の松並木の道の傍らに大いなる石地蔵ありしを維新の際並木の松を伐りとり、石地蔵は総泉寺入口に移したり」とあるとのこと。
「当寺入口に常夜灯あり、東畔に大地蔵安置す」とも記している。

お化け地蔵の台石によれば、この石仏は享保6年(1721年)も建立されたものらしい。
かなり古いものだ。
しかし、関東大震災のときに2つに折れてしまい、補修しているのだそうだ。
また、頭部も建立当時のものとは別のものに取りかえられているそうだ。

総泉寺は、昭和4年(1929年)板橋区へ移転した。
そしてお化け地蔵はここに残った。
なるほど、よく見ると胴体のところには折れたところがわかる。
こうして、いろいろな災難をくぐりぬけて、いまここにいいらっしゃることこそが、「お化け」なのではないかと思わせる。

実は5年前の2014年の9月に最初に訪れている。
それがこちらだ。


当時のほうが、お化け感が強い。
今は、笠をかぶり子どものお地蔵さまは赤い帽子とよだれ掛けがかけられている。
こうして、時代の違う写真を見るにつけ、お地蔵さまは定期的にお参りに行かなくちゃいけないと思った。

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人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。