お地蔵さんぽ【vol.38】名前のないお地蔵さま@入谷

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

名前のないお地蔵さま@入谷

入谷の鬼子母神の前にある路地に以前から気になっていたお地蔵さまがいらっしゃった。手を合わせてお参りをして、何度かカメラにその姿をおさめた。

一般のお宅の前にあるお地蔵さまで、顔などがはっきりとしているわけではなく、簡単に輪郭があるだけだ。
お地蔵さまのことを聞こうと、何度かこちらのお宅に呼び鈴を鳴らしたのだけれど、反応がなかった。
その後、こちらのお宅の斜め前にある喫茶店「SUN」を取材する機会があった。
その記事はこちらだ。

取材のため何度かうかがうなかでこちらのマスターに「斜め前にあるお宅の前にお地蔵さまがあるでしょ、あれってどういういわれがあるかご存知ですか」と聞いてみた。
マスターは「えっ、お地蔵さまってありましたっけ」と驚いている。
なるほど、普通の人はこういうものを見ても気に留めないのかもしれない。

それで、表に出て、指さしてマスターに「ほら、これお地蔵さまでしょ」と言うと、「あー、ありますねぇ」とおっしゃった。
さらに続けて「わかりました、機会があったらこの家の方に聞いておきますよ」とのこと。ありがたい。しばらくして、「SUN」を訪問して、どうですか、お地蔵さまについてなにかわかりましたかと聞けば、話が聞けたそうだ。

こちらの家の方の知り合いが、新潟から東京へ引っ越された時に持ってこられたとのこと。
最初は一軒家に住んでいたので家の前に置いていたのだけれど、マンションに引っ越したため、引き取ってくれないかと頼まれたそうだ。
それで、この家の前にいらっしゃったそうだ。

マスターによれば「ちゃんとお寺で魂を入れてもらっていたそうで、拝んでもいいんだそうですよ」とのこと。
ああ、よかった立派なお地蔵さまだったのだ。
家の近所なので、この場所を通るたびに手を合わせていた。
名前があるのかとマスターに聞いたけれど、「さあ、それは聞いていないです」とのこと。
きっと名前のないお地蔵さまなんだろう。

町にはこうして、風景に溶け込んでいて、単なる石のように思われるものも、ひょっとしたらお地蔵さまなのかもしれない。
もっと探してみようという気にさせた。

きちんとお寺などにあるお地蔵さまもいいけれど、僕はこういった、ちょっと見た目にはわからないようなお地蔵さまが好きだ。
もしそんなお地蔵さまをご存じだったら、ぜひ教えてほしい。
 
 

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【引っ越しのお知らせ】
当サイトにて連載中の「お地蔵さんぽ」は、ピースオブケイクの運営するサイト「note」への引っ越しすることになりました。

全話が見られるのはnoteだけで、当サイトでの掲載はピックアップとして1~5話と直近の5話の掲載を予定しております。
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この連載について

初回を読む
人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。