トーキョー・レガシー・ワンダーランド【vol.43】ベルモント@四谷

巨大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。
懐かしくて心惹かれる、うるわしの東京アーカイブズ。

ベルモント@四谷

2000年から2001年にかけて、僕は『スタジオボイス』という月刊誌で1ヵ月間毎日同じものを食べるという連載をしていた。
このことはすでに何度か書いているが、現在、ナポリタンの本を執筆中なので、そのときナポリタンを食べたお店を本連載でもよく取り上げている。
たとえば、新橋の「スパゲッティキング」や「ポワ」などだ。

ただ、今はもうない店ばかりをやってもなんだかむなしいので、今回は今でも食べに行けるというお店を選んでみた。
といっても、この連載でナポリタンを食べ続けたのは2001年3月の1か月間。
もうずいぶん昔のことなので、閉店している店のほうが多い。
とはいえ、数少ないお店のなかから、今回ピックアップしたのは、四谷にある「ベルモント」というお店。
四ツ谷駅からは新宿通りを新宿方向へ歩いてすぐの場所にあるビルの2階にお店はある。

ビルの入り口にあるこの看板が目印だ。
今回うかがってみて、当時となにひとつ変わっていないことに驚かされた。

うかがったのは午後2時前。
先客は2名。
中年のご婦人がおひとりさまずつ。
ほどなくお帰りになられた。
僕はひとりで窓際の4人掛けの席についた。
窓の下は新宿通りだ。この景色も昔とかわらない。

こちらは2001年3月のメニュー。
ナポリタンは700円。
そして、こちらが現在のメニュー。

ナポリタンはこちら。

むむむ、720円だ。20円だけ値上げしている。
しかし、気になる一文があった。
「小エビからハムに変更しました」とあるではないか。
前のをまったく覚えていないので、よくわからないなぁ、小エビが入ってたんだっけ。
というわけで、2001年3月のナポリタンをご覧いただこう。
こちらだ。

小エビなのかどうか、よくわからない。
画像を見て思い出すのは、とにかく盛りがよかったことだ。
これ、たぶん普通盛りだと思う。
で、今回のナポリタンはこちら。

キャベツのかんじから全体的に小ぶりになったような気がする。
ホッとした。
実は盛りがいい印象があったので、注文時に「少な目で」とお願いしようかと思ったのだが、それだと当時との比較にならないと思い、普通に注文したのだ。
女将さんがこまめにお水をコップに注いでくれる。久しぶりにお顔を見たが、お元気そうだ。

よく炒められている。
タバスコと粉チーズをかけていただこう。
ところどころ焦げているのは今風なかんじだ。
いやぁ、やはりおいしいねぇ。
かなりポイント高いぞ。
食べている途中で、後から来た中年の男性がナポリタンと瓶ビールを注文している。
スーパードライの中瓶のようだ。
いいねぇ。
が、やはりけっこう盛りがいい。
最後は少々きつい。
食べ終えて、お会計のときに「20年くらい前にこの近くに住んでいて、たまにこちらに来ていたのですが、昔と変わらず感激しました」と言うと、女将さんは「そうね、うちは40年くらいやっているから、そういうお客さん多いのよ、久しぶりにきて、まだやってるなんてね」。
で、前から気になっていた店名について質問した。

「ベルモントって、変わった店名ですね、どうしてこんな名前に?」

それには、女将さんよりも若い男性が答えてくれた。

「最初は『デルモンテ』という名前だったんですが、それが使えないっていうことで、それに近い『ベルモント』になったんです」

とのこと。
まさかの「デルモンテ」始まりだったのだ。
いやぁ、聞いてみるもんだね。
実は僕、ここで一番食べていたのは海老フライ定食。
マジでおいしいんだよね。
次はそれを食べようかしら。
 
 

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【引っ越しのお知らせ】
当サイトにて連載中の「トーキョー・レガシー・ワンダーランド」は、ピースオブケイクの運営するサイト「note」への引っ越しすることになりました。

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この連載について

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巨大都市・東京の発展の裏側で、かつての街並みは急速に失われている。
ノスタルジックで心に残る街並み、建築物、飲食店…。
真のレガシーを求めて、今日も裏路地を歩く。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。