お地蔵さんぽ【vol.4】「石敢當」の役割は魔除け(寛永寺橋@台東区根岸・鶯谷)

人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

* * *

鶯谷駅の北口から線路沿いに日暮里方向へ歩くと、頭の上に跨線橋が現れる。
跨線橋には階段で上がれるようになっている。階段を上るとそこには寛永寺橋という橋があった。

下を山手線や京浜東北線など多くの線路が敷かれている。
この寛永寺橋は昭和3年に架けられたそうだ。
かなり古そうだ。
それ以前はここに踏切があり、踏切で渡っていたのだそうだ。

ちなみにこの道は言問通り。
鉄道ができる前ここには坂があって、「寛永寺坂」と呼ばれていた。
今も碑が建っているが、坂はよくわからない。
日暮里よりにも同じような場所があり、「芋坂」という坂があったそうだ。
寛永寺坂も芋坂も根岸側から上野台地へ上る坂だったはずだが、その坂を掘削して鉄道が敷かれたのだろう。

ちなみに今ある寛永寺というのは、昔に比べるとほんの一部なんだとか。
徳川家の菩提寺であった寛永寺は、今の上野のお山全体とその周辺までという広大な敷地だったそうだ。
それが上野戦争のときは、官軍が加賀藩上屋敷(現在の東京大学キャンパス)に据えたアームストロング砲などで、上野のお山は焼け野原になった。

寛永寺橋を渡ったところにこんなお地蔵さまがいらっしゃる。

「石敢當」東京都台東区上野桜木1丁目15

首が取れたものがつながれているのが痛々しい。しかし、よくお世話されているのがわかる。
車通りが多いため、よだれかけが汚れている。

この地蔵さまには、名前があった。

「石が敢えて當たる」という意味だろうか。ネットで検索してみたらWikipediaがあった。
「元は中国伝来の風習で、福建省が発祥とされている」とある。中国発祥なんだ。そして、日本では沖縄に多くあるんだそう。次に鹿児島県などにも多くあるそうだ。

読み方は沖縄では「いしがんとう」あるいは「いしがんどう」と呼ばれ、鹿児島では「せっかんとう」と呼ばれることが多いとある。
「石敢当」と表記されることもあるようだ。

名前の由来はWikipediaにいろいろあったが、目を引いたのが「石の持つ呪力と関わる石神信仰に由来するとの説」だ。
というのも台座の部分に黒い玉砂利が数個置かれていたからだ。
なにか石と関係があるのだろうか。

また、沖縄では魔除けとして石敢當が設置されているのだそうだ。
Wikipediaによれば、沖縄では、魔物は直進すると考えられていて、三叉路や丁字路が多く、そこへ直進しかできない魔物がくると、突き当たりで跳ね返されてしまい、反対側の家に入り込無と信じられているのだそうだ。
そこで石敢當を設置するのだそうだ。
魔物は石敢當に衝突するとと砕け散るのだとか。

さて、このお地蔵さま、台座は新しそうだけれど、本体はかなり歴史があるように見える。
昭和3年にこの跨線橋がかけられる前はにあったという踏切の脇にお地蔵さまはいらっしゃったんおかも。
踏切で事故のないことを願って建てられたのだろうか。あるいは、事故に遭った子供の供養で建てられたのか。
あるいは、あらたな推理もできる。鉄道ができる前、ここは三叉路だったのではないかということだ。
江戸時代、この場所は寛永寺の境内だったそうだ。古地図を見てもそうなっている。

そういう昔を想像してみるだけでもお地蔵散歩の楽しみのひとつだ。

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この連載について

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人々を苦しみから救ってくれる存在として、古くから日本人に親しまれてきたお地蔵さま。
子どもの頃からいつも側にいる、ちょっと不思議な守り神を探す「お地蔵散歩」。
きょうもお地蔵さんを探しながら歩いています。

【著者】
下関マグロ(しものせき・まぐろ)
フリーライター、町中華探検隊副隊長。本名、増田剛己。
山口県生まれ。桃山学院大学卒業後、出版社に就職。編集プロダクション、広告代理店を経てフリーになる。
フェチに詳しい人物として、テレビ東京「ゴッドタン」、J-WAVE「PLATOn」などにゲスト出演。
著書『下関マグロのおフェチでいこう』(風塵社)、『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『たった10秒で人と差がつくメモ人間の成功術』『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、『歩考力』(ナショナル出版)、『昭和が終わる頃、僕たちはライターになった』(共著、ポット出版)、『おっさん糖尿になる!』『おっさん傍聴にいく!』(共著、ジュリアン)、『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』(共著、リットーミュージック)など。
本名でオールアバウトの散歩ガイドを担当。テレビ朝日「やじうまテレビ」「グッド!モーニング」、テレビ東京「7スタライブ」「なないろ日和!」、日本テレビ「ヒルナンデス!」、文化放送「浜美枝のいつかあなたと」「川中美幸 人・うた・心」など、各種メディアに散歩の達人として登場する。
本名名義の著書に『思考・発想にパソコンを使うな』(幻冬舎)、『脳を丸裸にする質問綠』(アスキー)、『おつまみスープ』(共著、自由国民社)、『もしかして大人のADHDかも?と思ったら読む本』(PHP研究所)などがある。
電子書籍『セックスしすぎる女たち 危ないエッチにハマる40人のヤバすぎる性癖』『性衝動をくすぐる12のフェティシズム 愛好家たちのマニアックすぎる性的嗜好』『みるみるアイデアが生まれる「歩考」の極意 すっきりアタマで思考がひらめく40の成功散歩術』など。