世界の主要企業の4割の株価が弱気相場入りだが日本の「官製相場」は底入りしにくい
世界の主要企業の4割の株価が過去1年間の高値から直近まで2割以上下がり、弱気相場入りしたと見なされる水準となっている(日経新聞11月21日号)。
米国で1896年に、ウォールストリートジャーナル紙編集長のチャールズ・ダウ・ジョーンズがダウ平均の計算法を開発して以来122年間、20%超の下げは16回しかない。20%までの下げは数十回あった。米国は20%超を下げると弱気相場入りしたとすることになっている。
筆者は景気循環と株価変動のタイムラグを戦後50年にわたって調べたことがあるが、その時に景気動向は1960年に旧経企庁が開発した景気動向指数をもって指標とし、株価は日経平均株価をもって比較した。その時に日経平均株価の20%超の上昇下降をもってトレンドの変化と見なした。99年にそれを論文として日本経済学会のマクロの部分で発表した時に色々な質問を受けたが「20%超の上昇下降をもってトレンド変化と見なす」ということに対しては出席した概ねの経済学者やエコノミストが賛成した。
米国市場では経験則から高値からの下落率が2割超となると上昇局面が終わって弱気相場に入ったとされてきた。今世界の時価総額上位1000社を対象に調べたところ、既に400社強が過去1年間の高値から20%超を下げているという(日経新聞11月21日号)。
今秋までのNY高を牽引してきたGAFAの4銘柄は既に20%以上を下げた。したがって、弱気相場入りしたと見なされている。日本でも最先端技術株は高値から2~3割を下げた(TDK・村田製作など)。全体相場の大天井に先駆して大天井を付け先駆して大底を付ける大手証券株は、既に2割どころか4割以上を下げている。
ハイテク株から逃げたマネーがそのまま株式市場から引退しているわけではない。既に銘柄別には大底圏内に入ったと言っても良いであろう銘柄が出始めている。「故郷返り」を為した銘柄である。既にアベノミクスの始動点のレベルまで下げた銘柄が著名銘柄でいくつも出始めてきた。
中央銀行が株を買う国は世界のどこにもない。日銀だけだ。そして国が出した国庫債券を中央銀行が買い取りそれを保有する、売り戻さない、という中央銀行は日本だけではないが珍しい。
政権と中央銀行が一体となって高株価政策をとる国は日本しかない。
こういうことは日経新聞や日経ヴェリタス誌は書かない。それは「官製相場」とか「高株価政策に支えられた株価」などという言葉を流行らせたくないからであろう。しかし官製相場であり高株価政策の下での株価は容易には大底はつけない。そこにまた投資妙味を大幅に薄めてしまう性質もある。
【今週号の目次】
(1)当面の市況
①中国経済急減速の実勢が上海株低迷を追認した形になった。
②NY株続落しても「20%超の下落をもってトレンドの変化とする」ということには至っていないが、その寸前まで来ている。
③中小型株に逆風
④カラ売り比率が40%台で高止まりは08年以降の最長記録。
⑤小幅上下の節目
⑥This is Japan 銘柄、今回はソニー
⑦日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)、米VI指数、欧州Vストック指数
⑧PERは割安レベル
⑨日本株投信への資金の純流入(流出-流入=純流入)は2007年以降で過去最高
※読者の皆様へ
以下は暗い話が続きますが、やがて来るべき買いの好機を待つべく警戒心
以てキャッシュポジションを高めに保持して満を持すべく、「冬来たりなば春とおからじ」の心境を共有したいという筆者の願いを込めています。
(2)いずれは来るNY株の減速、日本株の減速、これを迎えて「専門家たち」は高値予想を切り下げてきた
(3)NY市場の先導役は天井をついたか
(4)米景気はいつまで続くか
(5)NY株の終焉はいつ来るか
(6)世界の主要企業の4割の株価が弱気相場入りだが日本の「官製相場」は底入りしにくい
(7)NY市場の成長株
(8)中国景気後退は世界の金融市場に激震を与える恐れがある
(9)米中問題は貿易戦争に限らず軍事衝突の可能性さえ含みつつある
(10)青春期相場・壮年期相場・老年期相場の大天井とその終焉時のPERによる底入りの計測
(11)「金融正常化へのジレンマ」
(12)日銀の出口戦略―黒田緩和の幕の引き方
(13)来年1月から本格化する日米貿易交渉で円高不安はあるか、あまりないと思う
(14)円安傾向は伏在している
(15)先回のG7に続いてまたもや失敗に終わったAPEC首脳会議。
「外交の安倍」は内政で迫力を出せない首相の逃避行に見える
(16)APEC(アジア太平洋経済協力会議)の失敗はNY株にも日本株にも影響を及ぼした―「外交の安倍」が存在感を示す好機が来たのだ
(17)原油価格
(18)10年前からの読者Iさんからの「6740 JDIについて」の質問(19日、返信は22日と23日)
(19)DJ-【オピニオン】第3段階へ移行するトランプ外交
(出所:ダウ・ジョーンズ、2018年11月20日)
【来週以降に掲載予定の項目】
○TPP、12月30日に発効決まりに際して、「大国の衰亡は敗戦によるのではなく経済の衰退から始まる」
【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。
なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。
この連載について | |
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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