株価の極端な二極化は正常か異常か、定着するのか、一時的な姿か
21世紀になって初の現象が起こっている。
日経平均の数値と東証株価指数(全銘柄)の数値との比率が所謂「NT倍率」(日経平均とTOPIXの倍率)であるが、これが21世紀になって初めて12.96倍という、99年3月以来のレベルに達した。
この今世紀初の市場現象を今は誰も騒がない。
日経平均組み入れ銘柄が全銘柄平均よりも異常に高いことを示している。
日経平均に先物を多用するヘッジファンドのおかげだ、あるいは日銀が黒幕だ、など色々な見方があるが、事実は日銀は一昨年9月から購入ETFに占めるTOPIX(全銘柄)の比率を高めており、日経平均への影響はそれ以前に比べると低下した。
PERというような伝統的な尺度で割高な株が成長を求めてさらに買われ、割安株は非成長株だと言われて放置されていることから起こる。
銀行株やトヨタが割安株に放置され、結果的にNT倍率を上昇させた。
日本企業のPERは米金利感応度とほとんど逆相関関係だ。
つまり、株価には一株当たり純利益よりも米金利の方が重要だということになる。
今の「株価の二極化」が一時の姿なのか、恒常的にこういう状態が続くのか、異常なレベルなのか正常なレベルなのか、これは誰にも判らない。
異常現象か正常か――主力企業の4割が、日銀が10番以内の大株主になってしまった
日銀のETF買いは民主党時代の2010年に始まり、13年4月就任の黒田東彦総裁による異次元緩和で急増し、今は推計25兆円の株式を保有している。
約40%の企業が10位以内の大株主に日銀が入ってきた。
次の5社は日銀が筆頭株主だ。
サッポロビール、ユニチカ、日本板硝子、イオン、東京ドームの5社である。
日本株市場で日銀の存在感が一段と強まり、上場投信を通じた保有残高は時価25兆円、しかもこの買い越し額は海外投資家と違って打ち返しが出てこない。
日経新聞6月27日の記事によればKDDIの株主総会で日銀による売却の可能性が質問され、「対策の必要性は認識している」とこたえたという。
「昭和40年不況」の前年、東京オリンピック当年の不況相場で4大証券と大手銀行に出資させて「日本共同証券」をつくらせ市場の売り物を買い、日経平均(当時は東証ダウと呼んだ)の1,200円を強引に維持させた。
この1,200円は池田内閣が所得倍増計画を始めたときのレベルである。
そして日本共同証券だけでは「死守」できなくなったので、さらに翌年「証券保有組合」をつくらせてそこで1,200円を維持させようとしたが、それを割り込んだ途端に15%安の1,020円まで下がった。
それを救ったのは政策の大変化である。
佐藤内閣は戦後初めて赤字国債を出して大幅な財政出動を行い、新幹線・高速道路・住宅公団を大々的につくり、これが史上最長の「いざなぎ景気」へつながった。
日経平均は直ちに6割上がった。
5年後には2.5倍になった。
このプロセスで日本共同証券や共同証券保有組合の持ち株は市場で解消することが可能となった。
今の企業の約4割は日銀が大株主だというのは「異常」なのか「正常」なのか、「異常なねじれは正常に戻る」のがジョージ・ソロスの可謬論である。
日銀の25兆円の持ち株が市場で始末できるようになるためには、市場の日経平均は35,000円とか45,000円とかになっていかなければならない。
「異常なことは普通に戻る」ということは「日銀の持ち株が市場に放出されて、それを市場が吸収する力がある状態を指す」とすれば、日経平均の4~5万円はあるということになるのだろうか。
日銀と日本市場が抱えた巨大な問題である。
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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