投機の流儀 セレクション【vol.71】日本以外の先進諸国で起きている住宅バブル

日本以外の先進諸国で起きている住宅バブル

現時点で長期の住宅ローンが世界一安いのは日本である。
日本の住宅価格の上昇率は海外に比べて穏やかである。

過去20年間の変化率で言えば日本は29%下落した地点にある。
米国は127%上昇、カナダは256%上昇、オーストラリアは322%上昇、スウェーデンは332%上昇である。
これが過去20年間の住宅価格の変化率だ。
日本の住宅価格のピークはバブル絶頂期(株で言えば1989年12月、住宅で言えば1991年3月)までの5年間の上昇率は48%だった。

米国の10年金利が4月最終の週には3%になった。
そこで住宅ローンはどうなったかという騒ぎになった。
それに釣られて他の先進国の中央銀行も低金利政策を維持してきた。
自分たちが利上げを早めると自国通貨高が起きてしまうからだ。
このため多くの国では低金利の長期化を背景にした激しい住宅投資ブームが発生した。

国際決済銀行のデータによると、昨年9月までの5年間における住宅価格の上昇率は米国38%、カナダ48%、オーストラリア46%、スウェーデン53%だ。
最も過熱したのは、カナダのトロントである。
しかし、これが07年の8月にパリバ銀行に取り付け騒ぎが起きたような住宅バブル破綻による金融市場の神経機能を激震させることにはならないであろう。
あの当時は住宅ローンを債権化し、それを格付けし、投資対象として世界中が買ったからだ。
そこでそのバブルの破綻は07年8月にパリバ銀行から起こり、08年9月にリーマンの破綻となったのが所謂リーマンショックであり、日本の株価は89年の史上最高値から5分の1以下になった。

今回の日本以外で起きている世界の住宅バブルは、それが債券化され格付けされて投資物件として世界中にバラまかれている状態ではない。
したがって、この住宅バブルが退いても金融市場の神経機能を激動させるような問題とは質が違うであろう。

この件について、今はバブルか、バブルについての一考察、と言うテーマで、元・東証社長斎藤淳氏の「証券レビュー・58巻3号に寄稿した小論がある。
筆者の意見にかなり近いので近日中に要約をお届けしたい。

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この連載について

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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。

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