「社会的価値と経済的価値」、「感情と勘定」
世界平和という「社会的価値」についてはしばらく捨象して、投資利益という「経済的価値」を追求した例を少し述べる。
筆者は4年ほど前にウクライナが火器を交えた戦争をしている最中に、もちろん投資不適格債であるウクライナ国債を買った。
ジャンク債の極みである。
60ポイントで買ったものがうまく行けば短期間で100ポイントで償還になる。
しかし、まずく行けばゼロになるかもわからないが、そのウクライナの背景にはプーチンがいるからウクライナ国債を買ったのだ。
そのプーチンの政治手腕・軍事能力を信じたからウクライナ債を買ったのだ。
結果的には60ポイントで買ってすぐに80ポイントになったので利食いをしてしまった。
金額も資金効率もまことに良かった。
この話を当セミナで「個人的な事情だが」と述べて、人様には勧められる話しではないがと述べて、「社会的価値と経済的価値」とが別であるということの一例として、また「勘定と感情は別である」という一例として述べたことがあったが、読売ホールのパネルディスカッションに筆者も呼ばれて、その時の質問に「山崎さんのウクライナ投資は成功だったか」と読者の一人から質問があったので正直に答えておいた。
その行動に踏み切った動機は単純である。
ウクライナの財政状態を調べて償還可能性に賭けたのではない。
そんな能力は筆者にはない。
実は、それを「プーチノロジー」と言って、プーチンを研究する学問というのを言い出した人がいて、その人のプーチンの伝記を読み、好き嫌いは別として彼の能力を評価したからだ(『プーチン 人間的考察』木村汎、東大卒、北大教授 藤原書店、2015年刊)。
「プーチノクラシ―」といってプーチンの統治を研究する科学をプーチノロジーといって立論する。
プーチンは国家資本主義を目指す。
これは二・二六事件を起こした時の北一輝が唱えたものに近い。
極左は極右と近く。
見えやすい例で言えば、馬蹄形磁石のプラスとマイナスが馬蹄形としてすぐ隣にいるようなものだ。
このプーチノクラシ―というものを少々読んで、彼が4選したこともうなずけるし、エリツィンの時代に1円だったロシアルーブルがプーチン就任後は5円になり、今でも1.8円ぐらいはしている。
これもうなずける。
好き嫌いではない。
勘定と感情との違いである。
これを述べた。
そういう意味で社会的価値と経済的価値とは区別し考えていきたい。
そしてこの両者はトレードオフの関係にはない。
社会的価値同士はトレードオフになることは多い。
例えば、自由な競争には格差が生ずる。
自由と公平とのトレードオフである。
こう考えると、これからは「社会的価値の混乱するところに経済的価値がある」と言う可能性がある。
「社会的価値の混乱を望むのか」などと言う中学生のような議論は止めよう。
それと経済的価値とは初めから別だと言っているのだ。
この連載について | |
![]() 初回を読む |
半世紀にわたる実践投資で得たリターンはおよそ5億円。 博識ゆえ、哲人投資家といわれる著者が実践する、普通の人では看過してしまう独自の習慣とは?どんな相場でも負けない、投資の行動原則とは? 有料メルマガ「まぐまぐ」のマネー部門第1位! 不動の人気を誇る週報「投機の流儀」から、投資に役立つ貴重なセンテンスをセレクト! |
【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
電子書籍を読む!