投機の流儀 セレクション【vol.67】「史上最大の悪だくみ」に掛かった日本企業のトラウマ

「史上最大の悪だくみ」に掛かった日本企業のトラウマ

第二次大戦のドイツを制した、連合軍によるノルマンディー上陸作戦を「史上最大の作戦」と称し、その題名で映画にもなったし、この作戦は何本も映画になった。
何周年かを記念して連合軍主要国家の元首が当該海岸に集まって一入感慨があった。

ところで、20世紀後半の国際舞台での「史上最大の悪だくみ」は、何と言っても85年9月の「プラザ合意」であろう。
日本はその悪だくみにオメデタイことに自ら加担して、当時1ドル250円弱から2年後には120円台になってしまった。
2年で倍になるなどという通貨高は、先進国では例がない。
10年後には79円台にまでなった。
つまりはこの急激な円高によって日本の輸出企業は大きな打撃を受け、日銀は景気悪化を和らげるために公定歩合を大きく引き下げて金融緩和した。
その低金利が投機を招き、日本を超大型バブルに誘導する結果となり、90年にその崩壊を見た。

したがって90年1月から始まった「70年ぶりの大暴落」「20年デフレをつくった大暴落」もその源のまた源はアメリカ発の「史上最大の悪だくみ」たるプラザ合意にあった。

そしてそれに気付かずに自ら悪だくみに乗った日本国の政治家・官僚・官民エコノミスト・証券会社・銀行等のオメデタさにあった。
だが、そのきっかけは、やはりアメリカ発であった。
アメリカが国際舞台の状態はお構いなしに、自国の「双子の赤字」(財政赤字と貿易赤字のことを当時こう呼んだ)を解決する、その目的だけのために他国の経済にはお構いなしに5ヶ国を集めて大いなる悪だくみを強制した。

日本はおかげで自国のオメデタさを学習し、貿易戦争や通貨戦争が如何に自国の経済を蝕んたかを学習してきた。
その授業料は実に高かった。
しかも、長期間に及んだ。
そして今日現在なお、そのトラウマを引きずっている。
次に述べる事実はそれだ。

企業内に今使われずに残してある現金は1350兆円だという。
実に時価総額の2倍である。
また、GDPの2倍半である。
異常に膨大な金額を、配当を増やすわけでもなく賃金を上げるわけでもなく設備投資をするわけでもなく現金で1350兆円も社内に蓄えて持っている。
これも90年大暴落から生じたデフレ、不良債権山積みが生んだ「貸し渋り」のトラウマもあろう。

内閣府の調査によれば、輸出企業が採算をとれるレートは平均して100.6円だという。
「日経ヴェリタス紙」4月8日~14日号によれば精密機器は94.1円、電機は97.1円、機械は98.0円となるそうだ。
概ね1ドル100円以下の円高でも黒字は確保できるという。
但し、企業業績の上方修正に慣れっこになった市場は下方修正に対しては敏感に反応するであろう。
これからは下方修正が続出する恐れもある。

BACK  NEXT

この連載について

初回を読む
半世紀にわたる実践投資で得たリターンはおよそ5億円。
博識ゆえ、哲人投資家といわれる著者が実践する、普通の人では看過してしまう独自の習慣とは?どんな相場でも負けない、投資の行動原則とは?
有料メルマガ「まぐまぐ」のマネー部門第1位!
不動の人気を誇る週報「投機の流儀」から、投資に役立つ貴重なセンテンスをセレクト!

【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。

電子書籍を読む!

amazon kindle   楽天 kobo