貿易摩擦と大幅減税は80年代のレーガンと似ているがトランプとは根本的に違う
トランプラリー以降は大幅減税と大幅財政出動を好材料と見て、その副作用には目をつむって、本稿で何度も言う通り「いいとこ取り」だけをして「短期間に稼げるだけ稼いでおこう」というスタンスで市場に臨む短期投機資金がNYダウを動かしてきた。
80年代に新自由主義をサッチャリズムとともに進めたレーガンは、トランプと似たような大幅減税と財政出動と対日貿易戦争を仕掛けてきた。
80年代のレーガン政権は「ロン・、ヤス関係の蜜月」を乗り越えて、昼堂々と仕掛けてきたが、2期目になってから経済政策を大きく転換させ財政健全化への道を開いた。
インフレも強力に抑えた。
この時「伝説のFRB議長」と呼ばれるようになった2メートル6センチの巨人、ポール・ボルカーが辣腕を振るった。
「ボルカー・ルール」という投機資金の規制に対する畏怖は今でも残っている。
レーガンは大幅減税と大幅財政出動と大幅な対日貿易戦争を行ったが、政策を大きく転換させ得た。
それがその後のクリントンが拾った幸運であり、「俺は経済で行く」“It’s Economy!”と言って出たのは、クリントンがレーガンの政策転換の効果が現れる時期を読んだからである。
クリントンは前々大統領のなした政策の結果を「拾い物」したのだ。
レーガンがロン・ヤス関係の個人的親和関係は乗り越えて強烈な政策を進めたが、それを転換するところが見事であった。
トランプにそれはおそらく出来ないであろう。
最近NY市場が短期的に大幅な急落を示すのはこれに対する警鐘シグナルであると見たほうが良い。
普通は保護貿易主義というのは景気情勢が悪化する中で行うものである。
今回は好景気が史上最長とも言われているさなかに行われた。
11月の中間選挙に向けて支持率を高めるために、大幅減税・大幅財政出動・保護貿易等のカードを切り続けてきた。
最近時々起こるNY市場の短期的な大幅調整は投機資金の一時的な需給関係によることは勿論だが、それは現象面であって、その底流には一時的現象ととらえるのは楽観的過ぎる。
トランプが自ら2009年のリーマンショックから立ち上がって今まで続いた、過去最記録に近い好景気をトランプが自ら終わらせる政策に出ていることを市場は賢明にも予知し、その警鐘を時々鳴らしているのだと見なければならない。
この連載について | |
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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