「2018年はこれほど好環境に恵まれた年もないが、これほどリスクに囲まれた年もない」――米中、日米関係、2018年と言う危機の年
長期相場観の眼から見た量的緩和が抱える問題にも目を向けたい。
2008年の世界金融危機以降、欧米の中央銀行は非伝統的な金融政策を打ち出した。
それから10年を経た今日、このような政策については、その出口戦略を巡る議論とともに、どのような効果があったのかという点についても、関心が高まっている。
主要国の中で先行して2001年3月から非伝統的金融政策(貨幣量を増やす政策)の中核をなす量的緩和政策を実施した日本(福井日銀総裁)の経験から教訓を導き出すことは大きな意義があると考える。
日銀は日銀当座預金残高の目標値を当初5兆円程度でスタートし、その後に段階的に引き上げ、量的緩和政策の解除までこの目標値を維持する。
この量的緩和政策の効果としては、民間の金融機関は豊富な流動性を日銀当座預金として保有することが可能となり、不測の資金需要に機動的に対応することができるようになった。
確かに金融機関の流動性に不安のない状況は企業システムが安定化する一つの重要な要件ではある。
しかしこの効果は金融システム内部の流動性効果であり、一方では生産や物価への影響を考える伝統的なマクロ金融政策とは異なっている。
GDPについてもはかばかしく上昇したわけではない。
そこでマクロ的な効果については多くの論者が疑問を示す一方、理論的にも波及メカニズムの無効性が考察されている。
「量的緩和の無効性命題」を主張する論者も少なくない。
量的緩和には①金融システム内部の流動性危機に対応する役割と、②金融システム外部の景気・物価に対応する役割の両面があると言うことができる。
日本の経験では、前者①の役割については効果が認められる。
一方で後者の役割については意味がなかったという見方もある。
筆者もこの後者に与する者である。
08年の世界金融危機以降、欧米の中央銀行が軒並みゼロ金利に近い政策と量的緩和政策という非伝統的金融政策へ舵を切ってから9年経過している。
日本が実施した2001年3月(福井元日銀総裁)の量的緩和は、2006年3月の早過ぎた緩和解除によって失敗したと断ずることができる。
株価はそれを如実に表現した。
日本の実施した2001年3月から5年間における長期の量的緩和政策の効果の減少は、この時日本の教訓として提示することは意義深いことであろう。
日本銀行は量的緩和政策を解除した直後の2006年3月下旬から、直後(福井元日銀総裁)の2006年3月下旬から4月上旬にかけて、日本経済新聞に武田陽介氏が投稿し、「ゼロ金利に苦悩してきた日本経済を間近にして、日本のマクロ経済学者は自分たちの足元に転がる宝の山を分析する幸運に恵まれたと言って良い」と述べた。
鼓舞する意味も込めたのであろう。
ゼロ金利という異常時において、「平時においては意識されない金利の機能を見直す良い機会である」として論じていた。
「ゼロ金利の意義」は「流動性の罠」「資産価格の歪みである」として論ぜられた。
この連載について | |
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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