日銀幹部の人事
日銀総裁は内閣総理大臣がこれを任命し国会の承認を得ることになっている。
したがって「中央銀行の独立性」とはいっても時の政権とは切っても切れない関係にある。
このことを全く無視して独断と偏見だけで動いたのが90年初頭の故・三重野康元総裁だった。
故・三重野康こそ「失われた20年」の前の「失われた13年」(1990年~2003年までの13年間)の銀行機能停止時代を作出したA級戦犯である。
ところで今回の日銀幹部人事は「金融緩和継続を確約する」という政権側の表明である。
金融緩和継続を決意する首相にとって黒田総裁の再任は金融市場にも経済にも強いメッセージを発する重要な手段とした。
副総裁人事もそれに輪をかけるほどの強力な論陣である。
同時にこの人事は将来の「出口戦略」をますます難しくした。
歴史上類のない、文字通りの「異次元緩和」の出口を探って正常に向かうという動きを今度の人事が封じたことになる。
この日銀幹部の布陣には将来の大きなリスクが潜んでいる。
(1)景気続行を重視するあまり、財政規律が緩み、国家財政悪化の必然性がある。
(2)また、「出口戦略」を事実上封じたことになったのは将来の波乱を呼ぶ恐れがある。
(3)「2%目標」が達成され消費に弾みがつき本当のインフレが3%、4%と進んだ場合に今のままでは打つ手がない。
正常経済ならば金融を緩めて応援するのであるが、ゼロ金利だからこれ以上緩めることが出来ない。
FRBは3年前からそのことを心配し、将来の金融緩和の手を打つために(ノリシロをつくるために)金利を上げる方向に半歩踏み出した。
欧州ECBもその方向に踏み出しつつある。
日銀だけが遅れていたが今回の幹部人事でさらに遅れる。
しかし今までの5年間、黒田日銀の効果は大きい。
アベノミクスの効果も大きい。
2012年11月の衆院解散日をもってアベノミクス相場が始動したとすれば、日経平均は2.6倍だが、今から黒田総裁就任の13年春から現在までを比較してみると次のようになる。
日経平均10,400円→24,000円(2.3倍)
名目GDP492兆円→548兆円(緩慢ながら成長路線)
日銀の国債保有割合12%→41%(急劇に膨張)
公債残高の名目GDP比179%→189%(先進国最悪レベル)
失業率4.3%→2.8%(大きく改善)
問題の消費者物価上昇率、▲0.2%→0.9%(「2%目標」の目標は遠いが半歩前進)
この連載について | |
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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