史上最高値、主要25ヶ国全部の株高と高所恐怖症
これには世界的な景気拡大の期待が根底にある。
日本市場の株高も従来大相場に止めを刺さされたのは、「失われた20年」の予兆であった90年1月以降の暴落以外は全てが海外要因だった。
その海外景気が全て好景気だということは日本市場の株高に対しても最大の期待の根底となり、加えて日本国内のデフレ脱却の入り口が見えてくれば株価の上昇基調に一段と弾みがつく可能性もあるが、世界的好景気とか「今ほど好条件がそろっている時はない」と言われるときには往々にして不祥事の前兆である場合が多い。
上げ相場は自らの過熱の中に暴落の種をはらんでいくのだ。
自らの順調な筋書きの中に内部の矛盾をはらんでいくのだ。
ここはまた、木佐森吉太郎氏の「新株式実戦論」の中の言葉を借りれば、「遊泳の名人が激流を喜ぶに似ている」というところでもあろう。
ここは一番妙味があるところでもあり、梢の上にある幾つかの柿の実を採りに行くために高い梢に登って、旨く取ってくるか落下して大けがするか、の瀬戸際であり、こういう竿先のゲームはヒトの血を沸かすし、最も妙味ある処だ。
筆者は野村証券の現職時代は顧客の資金で大いにこれを味わった。
ヒト様のカネでさえ興奮し狂喜する場だから、自分自身の資金を稼働させる、天空の竿先のゲーム師にとっては最も妙味ある場面であろう。
但し、筆者自身の体験と蓄積と見聞とによれば、そういう方法では小ガネは回数多く頻繁に儲けるが金融資産は構築できない。
筆者もごく一部の資金でゲームに参加はしてる。
しかし、こういう用心も忘れない。
(★註1)
「高名の木登りと言いしをのこ、人をおきてて、高き木に登せて梢を切らせしに、いと危ふく見えしほどは言ふ事もなくて・・・・・」(有名な木登りの名人が人を高い木に登らせて梢を切らせにやったが、目くるめくほどの高所では何も注意せず)というところであり、「おるるときに軒長(のきたけ)ばかりになりて、『あやまちすな。
心しておりよ』と言葉をかけ侍りし」(無事に降り来たって軒先くらいのところまで下りたときになって「注意しておりよ」と声をかけた)というところでもある。
15日(月)NHKの「クローズアップ現代」を要約すると、下記のようになる。
「27,000円もあり得る(大和総研チーフエコノミスト熊谷亮丸氏)。
BNPバリパ證券投資調査本部長中空麻奈氏(★註2)は「今年前半は強く続く。
後半は不透明」としている。
この番組の後半に海外のファンドマネージャーが一人とジム・ロジャースが登場し、前者は「日本株にバブルの予兆がある。
アメリカでは07年のサブプライムローンの破綻は住宅ローンバブルであったが、今度は自動車向けローンの破綻が懸念される。
差し押さえされた自動車がおびただしい。
今ローンは破綻寸前まで膨れ上がっている。
日本の株式も危険水域に来ている」と述べ、ジム・ロジャースは次のように述べた。
「今世界の負債総額は1京8000兆円であり、これはリーマンショックの寸前よりも大きい」と述べた。
前掲の大和総研チーフエコノミスト熊谷氏は、手のひらを返したように「今の世界の負債総額は①最大が2000年のITバブル時であり、②2番目が世界恐慌を呼んだ1929年の大暴落の時であり、③3番目が現在である。
そして現在は②にほぼ近い状態である」というところである。
高所恐怖症という病いはあるが「いと危ふく見えしほど」は、普通は「高名な名人」は自ら注意するものである。
(★註)出典「徒然草」
(★註2)パリバ銀行は07年の8月にサブプライム債権の抱え過ぎによって破綻寸前となって取り付け騒ぎを起こした最初の金融機関である。
その1年後にリーマンブラザーズが破綻しリーマンショックの源となった。
賢明な投資家はパリバ事件でバブル破綻を嗅ぎ取ってリーマン破綻の1年前に全株を売り切った。
以下、クローズアップ現代の客観的な要約になる。
適温経済の恩恵は広く受け入れられてはいない。
日本株を買っている外国人投資家はさらに日本株は上がると見ている。
その理由は世界に例のない金融政策を続けているからである。
日銀はETFを買い続け日本の株価をした支えしている状態が続いている。
イギリスのヘッジファンド代表は日本にバブルが到来すると見ており1989年の最高値を超える4万円台を期待している。
大和総研チーフエコノミストの熊谷亮丸氏は「今年は適温相場が続き、株価は27,000円程度まで上がる」と見ている。
BNPバリパ證券投資調査本部長中空麻奈氏は「今年前半は強く続く。
後半は不透明」としている。
アメリカの自動車向けサブプライムローンが危ないと見ている米ヘッジファンド代表がいる。
ローンを返済できない人が多く出てきており、これが適温経済の潮目を一気に変える
可能性がある。
リーマンショックを彷彿させる。
株高に沸く日本経済にもリスクがあると見ている英ヘッジファンド代表は日銀のマイナス金利政策を注視しており、「地方銀行の融資部門の多くは赤字であり、そこにマイナス金利が追い討ちをかけている。
その影響は日本経済全体に及ぶはずだ」と見ている。
熊谷氏は中国バブルはすぐには弾けないと見ている。
ジム・ロジャースは今年の秋にアメリカ景気減速の可能性を指摘している。
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
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