投機の流儀 セレクション【vol.53】日本を含めた世界の株式ブームの中で考える事柄――惺めて居よう

日本を含めた世界の株式ブームの中で考える事柄――惺めて居よう

今はバブルか、そうではないのか。
こういうことを話題にしているときはバブルではないとは普通に言われる。
本当にバブルの時はバブルという言葉さえ出てこないものだ。
現に平成バブルの最中89年の大納会の大引けが史上最高値だったが、あの頃にバブルという言葉はなかった。
ただ一つ、その年の7月に旧経済企画庁発行の「経済白書」だけは「株式と不動産に資産バブルの要素がある」とひとことだけ触れていた。
01年に経企庁が総理府に合併されてその一部分となって名称は消えたが、経企庁には当代一級のエコノミスト・経済学者がそろっていたことは事実だ。
「バブルに踊らなかったオマハの賢人・ウォーレン・バフェット(株式資産22兆円の世界一の株式資産家)が使っている指標がある。
「バフェット指数」である。
(時価総額÷GDP)が100%を上回っている場合は警戒地域、警戒レベル。
120%になったら危険レベルだというのである。
これは経済学の立場あるいは金融論の立場から論証も出来ないし実証も出来ないが、事実としてそういうアノマリーは古くからあったことは事実だ。
今アメリカは危険地域のレベルに来ている。
アメリカだけではない。
世界主要25ヶ国の時価総額が25ヶ国合計のGDPの100%をはるかに上回っている。

筆者が半世紀前から使ってきた指標がある。
これは経済学部に在籍した者なら誰でも習う「マーシャルのk」という指標を筆者が転用したものでGDPとマネタリーベースの比率から転用し、(時価総額÷国民現預金)が60%を超えたら大天井圏内、40%を下回ったら大底圏内という数値であり、過去半世紀に7~8回のうち1回しか例外がなかった。
民主党時代の政治不作為の3年間は常にこの比率は30%台であった。
したがって、大底圏内を維持していた。
この期間には筆者は数年保有のつもりで「This is Japan銘柄」を下がれば買い下がれば買いを根気よく買い、3年間の雌伏期が筆者にはあった。
その3年間が過ぎて衆院解散が決まった12年11月14日から、日経平均が一挙に9割近くを半年で上がった、所謂「青春期相場」だ。
何でも買えば2倍になった。
その後また2年間、壮年期相場があった。
出発点からは2倍半になった。
大底圏内(「圏内」でいい。
必ずしも「大底」でなくてもいいのだ。
1~2割の誤差はあっても良い)を買って大天井圏内(「圏内」で良い。
1、2割は良いのだ)キャッシュポジションを高めてきた者にとっては、今は冷静に「ヒトゴト」のように市場を見ることが出来る。
「バブルに踊らなかったオマハの賢人」ことウォーレン・バフェットの指数も筆者の時価総額対国民現預金の指数も既に警戒レベルを越えている。

米国も日本も株価上昇は消費を支えGDPを押し上げ景気を回復軌道に乗せた。
日本の異次元金融緩和は株価上昇の主因であることにおいては、日米は共通している。

FRBはバブルの判定は無駄だと決めて(19年間FRB議長を務めたグリーンスパンがリーマンショック後に議会に呼ばれてその旨を証言した)、その代わりにバブル破裂後の金融政策こそ経済全体の命運を左右するのだと割り切り、事後対策に焦点を絞った。
流動性の供給は迅速かつ大量だった。
そしてまたそれの後始末も既に2年前から始めた。
所謂「出口戦略の静かなる開始」である。

FRBはバブル処理後の長い間の日銀の失敗に学んでいるのだ。
これがこういう時代にNY市場や東京市場や各国市場に余剰資金が覆いつくしている現在、株価の一喜一憂に振り回されても意味がない。

2018年も少なくとも当初は強気が続くであろう。
しかしリスクも依然として続くし、場合によっては大きくなる。
あるいは朝鮮半島の有事(「裏の裏は表になる」から「ない」とは言えない)の混乱、そこから生ずるトランプ指名のFRB議長の出口戦略のつまずき等々の国際情勢のリスクの一つでもあれば、パニックは起きかねない。
国境を越えて大量の資金が動き回る「金融のグローバル時代」とはそういうものである。

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この連載について

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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
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