オーナー社長企業とサラリーマン社長企業
筆者は10年ぐらい前のことだが、野村総研の親しい幹部にこう提案したことがある。
「オーナー会社の銘柄群とサラリーマン経営者の銘柄群とを分けて平均株価を出せば、前者のほうが高いはずである。
逆の場合は極端にダメになるはずだ。
例えば三光汽船のようにオーナー会社だからこそ会社を破綻させる、株価をゼロにさせるという例もあるが、概ねはオーナー会社のほうが高いはずである。
どのぐらい投資効率が良いかを測るために、オーナー会社銘柄群とサラリーマン社長銘柄群とを分けて、株価指数をつくって比較してみたら面白のではないか」と真面目に提案した。
すると彼は、即座に断固として断った。
オーナー会社銘柄群のほうが高いと決まっている。
投資効率も良いに決まっている。
そんな統計を出せば、事業法人部と金融法人部に恨まれる。
事業法人部や金融法人部が大手としている企業は、ほとんど全部が所謂「経団連銘柄」であって、大手企業は概ねがサラリーマン社長だ。
経団連銘柄はほとんどがサラリーマン社長だ。
メガバンクも皆サラリーマン社長だ。
法人部や企業部はサラリーマン社長の企業が大得意先なのだ。
山崎氏が言うようなデータを出したら彼らに嫌われるに決まっている。
そんなことは自分でやってくれ」というニベもない返事だった。
筆者の極めて親しい友人で証券会社の2代目オーナー社長がいるが、自分が筆頭株主であり、次が自分の持ち株会社が大株主である。
彼は「株価を決めるのは市場が決める。
だから市場に評価されるような良い経営をするのが俺の務めだ。
株価を決めるのは俺の務めではない」と“模範解答”を述べているが、「最も株価を気にしているのは本当は俺だ。
個人株主で筆頭は俺だからだ」と言っているのだ。
これがオーナー会社のホンネであろう。
ソフトバンク、キーエンス、日本電産、そういう銘柄群を見ると一理はある。
ただし、そのオーナー経営者が狂った場合にはその企業全体が狂うことになる。
これを阻止することは恐らく不可能である。
企業内における権力の力学がそうさせる。
ヒットラーにナチス政権の運営を是正させることは出来ないし、スターリンにソビエト社会主義共和国連邦の経営をアドバイスすることも出来ない。
たちまち暗殺されるだろう。
したがって、オーナー会社が必ずしも良いとも限らない。
最悪の場合もある。
会社を破綻させるのも恐らくオーナー会社のほうが多いであろう。
筆者は銘柄を見る時に必ず株主構成を見る。
そこにカタカナで書いてある得体の知れないファンドなどがある場合は避けるほうが無難である。
この連載について | |
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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