日銀のメッセージ――「稼げる間に稼いでおけ」
日銀は31日の金融政策決定会合で大規模緩和の維持を決めた。
繰り返し「出口議論」を退けた。
黒田総裁の発表を要約する。
(1)将来の緩和余地をつくっておくためには、今から引き締めておくのが良いというのは本末転倒だ。
(2)19年度に成長率は鈍化するが、「景気後退」ではない。
★筆者註 「景気後退」というのは株で言えば大天井を突いて下降相場に移ることを旧経企庁が定義した言葉である。
(3)現時点では政策変更は必要ないし、またやってはいけない。
★筆者註 「デフレ脱却が最優先だ。『物価2%』が最優先だ。将来の万一の危機の際の金融緩和のノリシロなんて後回しだ」、の意。無論、大蔵省国金のころに榊原英資氏と共に史上最大の円売り介入をやってのけた黒田さんだから、全て承知の上で言い切ったのだ。苦衷を察する。
(4)2017年度と18年度の物価見通しを下方修正する一方、17年の実質GDPの見通しを引き上げた。
日銀内部では08年のリーマンショックのときに、既に決定的な金融緩和を限界に近いところまでしていたから、これ以上の金融緩和の余地が乏しかったという反省があると思う。
もし、金融緩和を要するような危機に遭遇したら、今、今が緩和の極致に居る日本は緩和の余地がゼロである。
そういう危地にいるからこそ、FRBもECBも今のうちに将来の緩和余地(「のりしろ」)を作っておくために、出口戦略(★註)を取り始めたのだ。
日本が世界で最も遅れた。
★註 正確に言えば将来のために「ノリシロ」を作るべく、今の「異常緩和」を「正常範囲」に戻したいのだ。
日銀が動けないでいる間に米欧が「金融正常化」ということは「今は異常だ」ということであり、金融を引き締めることを指す。
そして次の景気後退期には金融緩和の余地を多くしようというのが欧米であるが、日本はその時に動けなくなる。
こういうリスクを承知の上で黒田さんは31日の記者会見に臨んでいる。
そういう顔つきである。
彼の顔には決意と暗さがみなぎっている。
「理論と気合の黒田さん」と筆者には見える。
第一市場が低迷していた9月までは、国内投資家は新興市場で活躍したが、「政府・日銀の高圧経済の後押し説」で海外筋が蘇って相場である。
彼ら海外筋にとっては将来の危機に臨んだ「ノリシロ」なんてどうでもいいのだ。
今のうちに稼げる間に稼いでおけ、という気である。
この連載について | |
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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