自分の流儀に徹するとき
週末は21年ぶりに22,000円大台に乗せた。21年前というのは日本のメガ證券とメガバンクが1カ月で3社が破綻した金融危機の前年である。金融危機の1年前は平成バブル崩壊後の戻り高値に湧いていたのだ。
週末は、アベノミクス相場の壮年期大天井を約1,000円上回った。筆者に言わせれば、5年前の相場始動期(12年11月14日、衆院解散決定の日)は8、665円だったものが2年7カ月で2倍半の21,000円弱(正確には20,952円)になったものが、そこから1、000円超えたというだけの話しであり、%で言えば5%でしかない。
筆者は「大底圏内」、「大天井圏内」という考え方を通してきた。
「天井買えず。底買えず」で通してきた。「圏内」だから1割くらいの前後はあると思っていただきたい。
現に本稿創始直後、8,000円を割った直後の「ここからは下がっても10%、上がれば100%」と言い続けた。
実際には7,054円まで下がったから正確には12.5%下がったことになる。だが、あそこで「『ここから下は買いだ』と言ったところに意味があった」として頂きたかったのだ。現にその時点から「週報」読者が急増したという経緯があった。
一般の騰落レシオは穏当な範囲だが、日経平均の騰落レシオは25日平均で一時は168%となり、史場初か、あるいはそれに近いぐらいの数字である。まず、滅多にはないことである。
連騰記録の後で初めて陰線が出た日は、売買代金が珍しく3兆円を超えた。
「陰線で3兆円」というのは本格的な下げ相場に見えたが、次の日にまた前日比で言えば上昇だったし、全銘柄の乖離率も4%程度だから穏当な範囲であるが日経平均25日の乖離率は150%を超えているし、25日線との乖離率は10%を超えた。
今は日銀やGPIFという公的資金が日経平均を支えているし、公的資金の買いによって日経平均の相場そのものがつくられている面が多い上に、海外筋のヘッジファンドが先物主導で釣り上げる面がまた多い。
こういう「異常事態」に慣らされてきた一般投資家(筆者を含む)は、歴史上なかった連騰記録や、今まで目にしたことのない日経平均の騰落レシオや、そういうものから見ると異例なものに見える。そろそろ短期的には調整があっていいものだと思いながら連騰を続けているという奇妙な風景に見えることであろう。筆者にもそう見える。
日銀は10月26日にも購入を見送り、16日連続で購入はしない日が続いた。
下落場面でETFを買うということが趣旨であるから、尤もである。
日銀は民主党時代の2010年10月にETFの購入政策を導入した。
「官製相場」によって史上類のない連騰相場や、史上珍しいと言えるまでの騰落レシオの150%台の連続や、そこへ持ってきて海外のヘッジファンドの工作や、そういうものの中で個人投資家の「日経平均は上げているが、個人的には満足はしていない」という状態が続くであろう。
しかし、ここはキャッシュポジションを高めて「待ち」のスタンスを貫くことを、筆者自身ならばそうする。
人にはそれぞれの流儀というものがある。短期売買を楽しみながら細かな利益を積み上げていくという方法もある。
それはそれで大いに良いであろう。
しかし、短期売買の利益を積み上げていっても、大勢が急変して大幅急落に遭遇すれば、10回分の利益が1回の急落で消えてしまうということがあり得ることだ。
筆者は、昔は自分でもそういう失敗を何度もしてきたし、顧客のそれを多く見てきた。
自分の目的は何か、主目的を明確に意識し、それは金融資産を増やすことだとするならば、それぞれ人によって目的も流儀が違うが、自分の流儀を自覚するにことが肝要であろうと呼びかけたい。
この連載について | |
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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