投機の流儀 セレクション【vol.37】農林漁業成長産業化支援機構は眠っている

農林漁業成長産業化支援機構は眠っている

2013年に安倍政権下で設立した官民ファンドの農産物の加工・販売を支援するファンドは、投資額319億円に対して設立から4年半で59億円弱しか使われていない。
これは農林漁業成長産業化支援機構と組んだ地域ファンドだ。
これまで3年間は出資ゼロのまま解散した。
いかに農林漁業がヤル気がないかを象徴している出来事だ。
その間、これにかかわる役職員は50人を超し、16年でまでの経費は累計40億円強だそうだ。
最終赤字額は45億円に達したという(この数値は8月26日付日経新聞による)。
総額1000億円強の大学発ベンチャーファンドの利用は1割未満だそうである。
成長戦略で設立した各省庁の需要見通しは甘く、国が投じた巨額資金は無駄に眠っている。

ベンチャー設立の場合、連帯責任制度や賠償責任などの抜本的な見直しが必要であると筆者は思う。
今の連帯責任制度では誰もそれを引き受ける者がいないのは無理もない。
長年補助金に慣れた農林生産者の反応は鈍いというよりも皆無であると言える。
筆者が何年も前から、最も立ち遅れた産業は農業であり、したがって、最も成長の余地があるのは農業である、と何回も何回も本稿で述べてきた。
これに光を当て、「成長戦略の本丸は農業だ」と言うことで、官・民・学界を通じて(中曽根内閣が三公社を民営化したときのように)、大騒ぎをして学界を巻き込み、財界を巻き込み、遂行しなければ進まないであろう。
「第三の矢、成長戦略」と看板を掲げてみても、多少の規制緩和や規制撤廃をやってみても、長年政府の補助費に慣れ親しんできた農民たちは、(ここから先の表現は筆者が一部読者の憎悪を買うところではあろうけれども、敢えて言えば)惰眠をむさぼってきたと言える。

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この連載について

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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。

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