長期資金は、資本構造の改善や賃上げといった変化に前向きな企業への個人投資家の需要とPBR1倍未満の会社の自社株買いなどが、売り方の勢力に動じない根強い上昇圧力となっている。新年度に入って連騰して、幸先の良さを示したように見える。
日本株相場の方向性は依然として7割(先物では8割)の売買代金を海外勢が左右する。3月のリーマンショックと勘違いした金融不安でヘッジファンドは売りへ傾き、上げ相場が一旦は安定したが、この下げ相場で見せた日本株の意外な底堅さが目立った。
3月の第3週に海外勢は2.4兆円を売り越して、一週間単位としてはアベノミクス始動期寸前の2012年以降の最大の売り越し額だったが、TOPIXの下落率はわずか3%にとどまった(コロナショックの時の大幅下げは20年2月の最終週に海外勢の売りが1.8兆円の売り越しであり、TOPIXは10%安となった)。
今回は大幅売り越しに対して3%安で頑張った。以前と比べて、相場の底堅さの背景には下値で構える国内投資の買い勢力が岩盤のように横たわっているように見える。3月第3週の個人の買い越し額は7500億円に達した。個人の買い越し額の統計が始まって以来、最大の買い越し額となった。
事業法人が買い越しを続けている力も見逃せない。「相場下落時には買い向かう」という市場参加者が増えているように見える。自社株買いはさらに増える可能性もある。そうなると、日本経済の景気後退の確率が割合に高いところで日本株はかなり頑張っていると言える。
先週半ば4月4日(火)の日経平均は、事業法人の買いは1週間平均1000億円ペースで続いている。このような動きから、相場下落時に買い向かう法人・個人が増えてきている。来年度からNISA(少額投資非課税制度)の拡充などの制度の差さえもあり「需給関係の好転から日経平均はボックスを抜けると仮定すれば、上に向かう可能性が強まってきている」と気の早い筋は言う。NISAの拡充という「ママゴトのようなこと」と昨年述べたが、あれは早々と撤回して良かった。
バリュー株への物色は米銀行不安によって一旦収まったが、日本株全体の割安感に対する海外勢の関心は薄れていないと見える。
【目次】
■ 第1部;当面の市況
(1)市況コメント
(2)当面の市況
(3)4月と10月の年度替わりの市況の特色について
(4)まずは、賃金上昇から始まる。
(5)短期筋の空売りの力学に動じない個人の物色と企業の自社株買い─個人投資家の動向統計開始以来、最大の個人の買い越し額7500億円
(6)金利上昇への警戒感が続きそうだ。
(7)低PBRブーム
(8)ブームの型を乗り違うと拙い結果になるから、一切手を出さないという手もある。これもまた市場行為の一種だ。「休むも相場」だ。
(9)日本製鉄(5401)と東電(9501)
(10)再び、日本製鉄および東電
■ 第2部;中長期の見方
(1)昨年度(2022年4月〜2023年3月)の状況
(2)米に金融不安の再燃はあるか?
(3)FRBは0.25%の利上げを継続
(4)FRBも難しいバランス感覚
(5)景気後退確率と日柄感から見ての日本景気
(6)商品市場としての電力市場
(7)米シリコンバレー銀行の破綻に学ぶもの
(8)米市場で楽観論が後退
(9)「NY市場の写真相場」たる日本市場の宿命
(10)逆イールド現象と景気後退
(11)インフレは長期化するか?
(12)名門クレディ・スイスの消滅
(13)海外投資家の日本株売り
(14)「安倍晋三 回顧録」(中央公論新社)
■ 第3部;賢い投資のやり方について考える No.2
■ 第4部;読者との交信蘭
(1)3月26日号での交信の結果の返信、Y様より
(2)4月6日着信のA様との交信
【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。
なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。
この連載について | |
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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