日本におけるロボット工学の元祖は東芝である。
江戸時代末期が明治時代初期に、からくり儀衛門がからくり人形を作った。
からくり人形と聞くと玩具のように思われるが、これが機械工学の原初形態であるロボットの日本における嚆矢であると筆者は思う。
今では工業生産に不可欠であるだけでなく、好奇心誘うことひとかたならぬ現代社会のヒーローとでも呼ぶべきロボットは、150年前にからくり儀衛門によって始まったのだ。
これが東芝のルーツである。
東芝は由緒ある機械工学の先駆者だったのだ。
1920年頃大正末期、チェコの作家カレル・チャベックが出版し上演されたロボットの話があるそうだ。
その筋書きはまるで映画「ターミネーター」の原型であるかのごとくである。
ロッスムという大学者が、魂を持っていないだけで、他の能力は完備したロボットを発明し、理想的な労働者として大いに売り出す。
全世界にこのロボットが普及したときに、格別に魂を与えられたロボットの指導者により、人間に対する大反乱が一斉に起きる。
作者は、ロボットはすべて暴徒と化し、人間に甚大な危害を加えるという性格付けを確立した。
それ以降の西洋においては、ロボットは悪魔と見なされ、この一部がフランケンシュタインの物語になったりしてくる。
ところが我が国では、国民のすべてがロボットは頼りになる仕事仲間と見なし、あるいは好意を以って力添えになり「お助けマン」として歓迎する風潮があった。
だからロボットを奴隷や僕としては見ない。
ともに働く有能な仲間であるから、何々号とか呼ばないであだ名を付けて、アトムちゃんとかももえちゃんとか呼ぶようになった。
日本人がロボットを愛すべき仲間であると考えるように、明るく朗らかに、かつ有能に仕上げた主導者は誰か。
勿論、言わずもがな手塚治虫である。
かつて本稿で既述したが、原子力の平和利用の典型は鉄腕アトムである。
あの小さな体に10万馬力という力は核分裂と核融合以外にない。
そしてまた不幸なことに鉄腕アトムは物理学者の計算ミスによって、太陽の引力に吸い込まれて、太陽の核融合の6000℃の中で燃え尽きた。
ロボットと言えば、機械的な音をたてて動く金属製の物体を想定するであろうが、150年前のからくり義衛門のロボットはもっと人間的だったようだ。
俳優西村晃の父の西村真琴氏は機械工学の異才であった。
彼が作ったロボットは学天則と名付けられ、体内には血管のようにゴム管が張り巡らされており、空気を送り込むことによって、人間のような動作ができたそうだ。
天皇の前で展示して見せた時に、そのロボットは微笑を送った。
ロボット学天則が微笑んだ時に、まず宮内庁の人々は驚きの声を上げ、思わず両手を合わせて拝みだしたという。
誰もが仏像に思いを寄せ、観音様のイメージを思い浮かべたのだ。
この学天則の話は『知ったかぶり日本史』(谷沢永一著、PHP研究所 2005年刊)から引用した。
【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
電子書籍を読む!