投機の流儀 セレクション【vol.280】今の円安は本当に「悪い円安」なのか?

数値だけから言うと2002年以来の円安である。あの当時は「失われた13年」の末期的現象であったが、円安は輸出業者、主として自動車・電機などの大企業が大いに潤ってお陰で景気が良くなるということで喜んだものだ。ところが、同じレベルにある今の円安が「悪い円安」ということになり、原油が上がる、輸入商品が上がる、全てに迷惑だということになっている。果たしてそうなのだろうか?
「悪い円安」と言っている人たちを見ると、輸出で利益を得る自動車メーカーや輸出入両方で活性化する商社などはひとことも「悪い円安」とは言わずに概ね円ドル相場に直接関わっていない評論家たち・ニュース解説者たちだけが「悪い円安」と言っているような気がする。しかし、例えば通俗世論を一切無視する武者陵司氏などは、いかなる状態でも円安は日本にとって有利であるということを今も主張し続けている。果たして今の円安が輸出立国の日本にとってトクなのか、あるいは食料品の7割を輸入に頼りエネルギーの大半を輸入に頼る日本にとっては不利なのか、これについては主張する人々の立場によって
異なるような気がする。筆者自身も評論家やニュース解説者やテレビの影響やビジネスに無関係な人々の意見の影響を受けつつあるような気が自分でする。

そこで筆者が思うのは50年ほど前から機械的に決めてきた企業の卸売物価の10年移動平均と円ドル相場の10年移動平均との40%乖離をもって大天井とするのが間違いないように思っている。
もちろんビッグマック指数などは当てにあらない。ビックマック指数では日本はむしろ途上国並みである。北欧諸国やアメリカの半分以下である。ただ、これが世界中いたるところに売っているし、誰にでも馴染みのあるものだから流行っているに過ぎないような気がする。そこで筆者はパートナーの石原建一氏のグラフから悟ったことであるが、アメリカと日本のマネタリーベースの比率を長期的に見ると、これが少なくともプラザ合意以降、円ドル相場のトレンドやレベルを見るには最も客観的な数字であるように思われる。少なくともプラザ合意のあとはマネタリーベースの比率と円ドル相場はパラレルである
ちなみに石原建一氏制作の「マネタリーベースの日米比率と円ドル相場のグラフ」を掲載する。


 
【目次】
第1部 当面の市況
(1)直近の米国市場
(2)「日経平均2万7,000円の壁」
(3)日本株の日中値幅が3ヶ月半ぶりの縮小=膠着感が強まった象徴
(4)投資信託に向かう投資家が海外志向に傾いている
(5)今の円安は本当に「悪い円安」なのか?
(6)「悪い円安論」を普及させつつあるのは誰か
第2部 中長期の見方
(1)現状の経済実勢と株式相場の位置
(2)参院選後は岸田政権は「やりたい放題やれる」
(3)賃上げ4年ぶりの高水準
(4)米国株の調整基調の中で日本株が相対的な強さを保っている―「政策に売りなし」「政策には買い迎え」
(5) “捨てたものではない”日本経済の力
(6)バイデン来日時、重要なことは四つほどあった
(7)「戦争とは外交以外の手段で遂行する政治の延長である」(クラウゼヴィッツの定義)。「外交以外の手段というのは武力だけではない。経済制裁も含む」
(8)2023年以降も利上げするであろうということを今から言っているFRBのメンバーもいる
(9)電力問題―「電力難民が燃料高で急増」
(10)「原発は武力攻撃に耐えられない」しかし、原子力の平和利用は核軍縮・核不拡散と並ぶ三本柱の一つとされている
(11)ロシアへの経済制裁の長期化がもたらすロシア以外への破壊的効果
(12)一周遅れの日銀―「英雄の末路憐れむべし」
(13)日銀と違ってFRBには二つの使命がある
(14)ウクライナ侵攻長期化により主要14銀行で大量損失1.6兆円
(15)日本の産業で最も伸橋ばす余地ある産業は農業ではないか
(16)いつかは本稿で取り上げねばならいテーマ―憲法改定の話し
第3部 米株市場
(1)米株が歴史的な下げ局面
(2)NYダウ下落は消費減速を警戒
(3)「米株が年初は過去100年で4度目の『スーパーバブル』に入っており、最終的に50%下落する」

【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。

なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。

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この連載について

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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。

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