投機の流儀 セレクション【vol.28】グラス・スティーガル法、旧証取法64条

世界恐慌下の1933年にグラス・スティーガル法が成立し、銀行が証券業を営んではならないこととして銀行と証券を分離させた。
日本で言えば旧証取法64条の「銀証分離」である。
ところでグラス・スティーガル法は99年に規制緩和の流れで廃止された。
これはアメリカの投資銀行(日本で言えば証券会社)と商業銀行(日本で言えば都銀・地銀)である。
この二つを分離させた。
トランプはインタビューで、大手金融の解体を検討していると唱え、銀行と証券の分離を示唆した。
すなわち、グラス・スティーガル法の復活である。
ムニューチン財務長官が、「銀行証券の分離は支持しない」と言って火消し役に回った。
一方、サンダース上院議員は反ウォール街を掲げてグラス・スティーガル法の復活を唱えた張本人だ。
現在、トランプ政権内で銀行証券の分離を主張する声は少ない。
もともとこれは1930年代、金融危機の再発を防ぐために出来た法律である。
だが、銀行証券の分離に話題がリスクは消えない。

ブッシュ大統領の前半、FRB議長を務め大統領さえタジタジだった2メートル6センチの巨人ポール・ボルカーは、グラス・スティーガル法を掲げ、強烈にインフレを収めた。
ボルカー・ルールとして今もウォール街を震撼せしめる。
1933年に成立したグラス・スティーガル法を99年の規制緩和で廃止したことが、2008年の金融危機(リーマンショック)の原因になったことは事実だ。
所謂サブプライムローンという低所得者向け住宅ローンを債券化して、世界中にバラまかれた。
これがリーマンショックを大きくした。
米国民も他国民も99年のグラス・スティーガル法廃止がウォール街暴走のもとになったということは脳裡に刻まれている。
トランプ氏はそれを判っているのかいないのか。
ウォール街を敵とするのか味方とするのか。
上記のことは6月24日付の日経新聞に「米に銀証分離の亡霊」という見出しで、トランプがウォール街の敵なのか味方なのかという記事を記名入りで掲載している。
そこには「銀行・証券の分離を呼び覚ますくらいならば、現行の規制体系の微調整で良い。
そんな空気も漂い始めた」と述べている。

BACK  NEXT

【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。

電子書籍を読む!

amazon kindle   楽天 kobo