今は、これからの市場展開について重要なポイントだから、投資行為を為す場合に最も重要なことはファンダメンタル分析でもテクニカル上の見方でもなく、一番大切なものは、(大袈裟に言えば)「相場道」または「投資哲学」であって、本稿でいう「心得」「心構え」である、という場面に遭遇していると思われる。
そこで、専ら、「投資家にとって基本的に必須な素養は何か」について総括的にまとめて述べることと致したい。
【キーワード】
「知能」と「知性」の違い。「割り切る」と「腹を決める」の違い。
「相場は相場に聞け」なる格言。群集心理の愚かさと賢明さ。
(1)「相場は相場に聞け」なる格言――ヒトの知恵は何千年も変わらない
人の知恵は大して進歩するものではない。
2500年前の一人の中国人とその弟子たちの言動が今でもロングセラーになっている。「論語」である。
2000年前の一ユダヤ人のことが今でもロングセラーになっている「新約聖書」である。
紀元前数百年の極めてプラグマティックな中国の戦略書がナポレオンにもルーズベルトにも読まれ筆者もほとんど全文を今でも諳んじている本文26頁しかない古典もある。「孫子」である。
自然科学の方は日進月歩で、月面に人を運んで歩かせるなどという離れ技を半世紀近く前にやってのけた。
英国に起きた産業革命で従来はヒトと馬がやってきた筋肉労働を蒸気機関にやらせるようになってヒトは頭脳労働に専念するかと思うと、今度はAIなるものができて頭脳労働まで機械で出来るという。
文明とは自然との戦いだったが今では「自然に対して優しく」などという僭越な言い分が流行っているほどだ。
これを言う人は管理された自然林とか動物園に居る猛獣しか見たことのない人に違いない。
本当は自然の方が人間より断然強いのだ。
東北震災や熊本震災やハリケーンを見ればわかる。
ケニアのマサイラマ国立公園やタンザニアのセレンゲティ国立公園に行けば分かる。
筆者は狩猟も趣味の一つで、毎年冬の猟期には長野県下伊那で鹿と猪を数頭獲るが、山に入ればヒトが如何に無力な生き物かが厭になるほど分かる。
銃を持ってこそヒトは野獣と対等になるのだ。
ヒトの知恵は今も昔も変わらない。欲望や恐怖や羨望も変わらない。故に昔から相場の本質は変わらない。変わるのは現象面だけだ。
「相場は相場に聞け」とはこれが前提にある。
そして、市場の現象を観察して、次の市場を推理しようというスタンスは、観察という理性を重視する、優れて自然科学的態度と言える。
【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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