週末の下げを言うのではない。その前からの膠着状態を言ってるのだ。
岸田さん、ホンネを語ろうではないか――「催促相場」を読み取るべし、だ。
90年から今まで30年間、日本の賃金は上がってない。横ばいである。
(IMF統計によれば)1人当たりの年収は世界で22番目だ。韓国に抜かれた。韓国は19番目だ。先週の「動画」ではIMFのグラフで説明した。
90年のバブル時は日本は英・仏と並んでいた。あれから30年、賃金は横ばいでいるのに、企業は「貸し渋り」のトラウマから480兆円もの内部留保を貯めこんだ。これはGDPからの壮大な「漏出(経済学用語)」だ。この漏出をGDPの流れの中に戻さねばならない。そのためにはM&Aもよし、自社株買いもよいが、しかしGDP構成要素に戻すには設備投資するか従業員の給与を上げることだ。
―→そうすれば消費が増える―→GDPの6割占める消費が増えれば―→GDP増える―→これが経済成長だ―→これが「分配と成長との好循環」というものだ。
「成長と分配との好循環」でばない。ホンネは「分配優先で成長との好循環」なのだ。
「成長なければ分配なし」ではなくホンネは「分配優先なければ成長なし」なのだ。
しかし、この主張は、「分配の正義」とか「公平感」とかいう「社会的価値」から言うのではない。「経済的価値」から言ってるのだ。
俺は宏池会伝統のリアリストだ。俺は宏池会伝統の経済優先主義だ、こう説けば市場は一旦は勘違いして下がるが、直ぐに分かるはずだ。
宏池会の先輩池田勇人は、前任者岸政権が60年安保で死人まで出して国論を真っ二つに割った、それを池田政権は国民の目を経済の一点に向けさせて国論を所得倍増論への凝集力に高めて10年倍増目標を7年で成立させた。
岸田さんの今の立場は池田勇人に似ている。宏池会初代首相池田が60年安保で真っ二つに割れた国論をまとめるという十字架を背負って出た政権だった。
アベスガノミクスの8年9ヶ月で企業の内部留保の蓄積と従業員の所得停滞とが分断された、格差は企業対従業員の間でおきた。そこで480兆円と言う膨大な「漏出」を生じさせGDPを停滞させた。安倍政権時代の通算成長率は1.1%だ。ゼロ成長に近い。この点、73年秋の第1次オイルショックの時に、高度成長論の理論的支柱であり池田勇人のブレーンだった下村治は、いきなりセロ成長論者に急転・転向した、あれは今になってみると的中していたのだ。
岸田政権は、アベスガノミクス期間に生じた「企業・対・従業員の、富の分断」を纏めるという十字架を背負って出た政権なのだ。経済成長の一点に凝集させて遂行する気なら、それをホンネで国民に説明すべき時に来ている。そうすれば、少なくも株式市場は一旦は社会主義的政権だと早トチリして急落するだろうが、早期に理解して、その急落をバネとして大相場が始まる可能性はある。
株式市場はそれを催促しているのだ。日経平均が3万円になると下落する、これを岸田政権発足以来、何度も繰り返してきた。
下村治のようなブレーンがいないのか、岸田さんは「特技は人の話を聞くことだ」と言うが催促相場を読み取れないのか、と言いたい。宏池会4代目の総理の宮澤さん以来、長い空白で宏池会は政策運営能力を喪失したのか?と言いたい。
【目次】
第1部 当面の市況
(1)週明けは売り先行で始まろうが、突っ込み買いを入れられるかどうか「一足一刀の間境」の場面に入った
(2)週明けは売り先行で始まろうし、新安値銘柄の更新が続出、騰落レシオでは、「ぞぅっとしたところを買うべし」ということになり「売られすぎのレベル」であっても、25日線との乖離は「売られすぎ」のレベルまでは来ていない。短期的には難しいところに入った
(3)水曜日の大幅下落は「米利上げ早まる説」が震源地?
(4)マザーズ売買代金2000億円超が6日連続
(5)「日経平均、来春3万3,000円超え」――野村アセットマネジメントの見方
(6)アンチ「野村アセットマネジメントの見方」①コロナ前よりも相当に高い水準の消費が行われるという可能性は少ない
(7)アンチ「野村アセットマネジメントの見方」②需給面から見た日本株の相対的出遅れは続きそうだ――深層は日本のGDP推移の弱さと岸田政権の経済政策の不明瞭にある
第2部 岸田首相よ、「催促相場」を読み取るべし
(1)株価は、何をそんなに怒ってるのか?
(2)最大規模の経済対策55兆円に対して株価の反応は薄かった
(3)最近の経済実態と岸田政権の価値観
(4)岸田首相の「経済成長」は「(宏池会初代首相の)池田元首相の経済成長」の引継ぎ、「デジタル田園都市構想」は「(宏池会2代目首相の)大平元首相の田園都市構想」の引継ぎ、「人の話しを聞く特技」は「池田元首相の『低姿勢=正姿勢』」の意訳。斯くて岸田首相は宏池会の基本を忠実に退き継いでいる。しかし宮澤政権以来の長い政権担当空白期間で経済政策運営能力を喪失したのか?
第3部 中長期の見方
(1)世界の投資家の動きは上場投資信託ETFから株式へ移行(QUICK調査)
(2)来年の米中間選挙の行方は不安定
(3)バイデン米大統領惨敗の恐れ
(4)為替相場に対する日銀のスタンスには変化はないだろう
(5)FRBがインフレ進行と見做して利上げ政策を市場想定より早く踏み切れば米株高は終焉を迎える
(6)トルコリラ、エルドアン大統領の暴走と通貨暴落
(7)急激なトルコ通貨安にトルコ混乱
第4部 読者との交信蘭
(1)先週21日号の 第3部読者との交信欄(3)のH様への追伸
(2)京都のI様との交信(11月25日)
【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。
なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。
この連載について | |
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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