投機の流儀 セレクション【vol.185】ポストコロナの経済回復はV字型であるという背景

コロナ第2波への経営者の危機感が強まっているとのことで日経新聞が社長100人へのアンケートをとったところ、事業環境の回復に2年以上かかる予測が過半に達したという(日経新聞21日版の一面記事)。
「コロナの長期化に危機感をもって臨んでいる」が、100人アンケートのうちのほぼ全ての企業がテレワークを続けており、4割近くが「オフィス面積の縮小とシェアオフィスの活用」を検討中だという。

1918年からのウィルスの世界全体の感染「スペイン風邪」は終息まで3年かかった。そしてその時の日本の人口の約7%に相当する44万人(公表では39万人)が日本国内で死亡した。当時とは比較にならない。しかし、当時は株も下がらなかったし景気も悪化しなかったし、それがバブル化して昭和恐慌につながっていったという経緯がある。

回復までに2年以上かかるという過半の経営者の意識はポストコロナの経済が立ち直った後の姿は武者凌司氏が説くようにV字型回復となり、イノベーションを加速させる結果になるのかもしれない。
日本が90年~03年まで長い所謂「失われた13年」の期間、長い間の不良債権山積み時代で金融機能が停止した時の経済の長期停滞の最中にキッシンジャーが「日本は国難に遭うと自らの知恵で新しい時代を切り開いてきた。歴史を調べるとそういうことになっている」と予言し、間もなく小泉政権が不良債権処理に対する方針を180度転換し、公的資金をぶち込んで最後の2.1兆円でりそな銀行の不良債権を片付け、不良債権不況に幕を引いた。それが2003年の春であり、そこから日経平均が2倍半になった小泉郵政改革相場の大相場の走りとなった。

キッシンジャーの予言の通りだとすれば、また理論家の武者凌司氏の説によれば、ポストコロナの経済回復はV字型であるという背景に、例えばテレワーク、例えばAI化、例えばIT化、デジタル化の急伸などを含めたイノベーションを加速させる原因になり、活性化された経済が訪れる可能性があるのかもしれない。
平成史上最速のスピードで7,500円を急落し、また、最速のスピードで6,500円戻った。しかも、最初の3日間は一日1,000円幅の上昇が3日続いた。こういう劇的な下げ・劇的な上げ・劇的な戻し、そして6月以降長期にわたってアベノミクス大天井(本稿では2018年10月2日老年期相場の大天井2万4,270円としてきた)の約94%の位置に張り付いた保合を堅持している。
売買代金が少なく膠着状態とはいえ、大相場の最高値の94%のレベルでの往来相場は将来の何かを暗示しているのかもしれない。

【目次】
第1部 当面の市況
(1)当面の市況は、(金融超緩和=株高。景気回復=株高)・対・(不安材料山積み=株安)、この綱引きが当面は続くであろう
(2)連休明けの週から上場企業の4~6月期決算発表が本格化
(3)高PBR株の流れに変化
(4)グロース株とバリュー株、上値の重い展開、グロース株先行に警戒心
(5)7月20日月曜日に東証時価総額が600兆円台に再び乗った
第2部 中長期の見方
(1)政府は1月まで月例報告で「景気は緩やかに拡大しつつある」と言い続けたが、7月22日になって初めて景気後退を追認した
(2)対コロナは、早くワクチンを開発してそれを地球規模で普及させることが先決であり、「戦い」でもないし「撲滅」でもない
(3)ポストコロナの経済回復はV字型であるという背景
(4)「コロナが揺籃するイノベーション 」
(5)企業の自社株買いの副次効果が今になって顕著に出てきた
(6)当面の市況:NY市場の「跛行相場(★註)」のすごさ
(7)10月の総選挙強行
(8)コロナ感染率と死亡率と戻り相場との関係
(9)概ねの政局――票田は平常時には変革を望むが、異常時には安定を望む
(10)大国の横暴の時代はますます進むから、 安倍・トランプ蜜月時代はほどほどに薄めて行かなければならないのではなかろうか
(11)習近平政権の強化と新たな粛清
(12)世界の覇権を狙う中国の動き
第3部 コロナ禍でオルタナティブ投資が拡大するであろう
(1)オルタナティブ投資
(2)プライベート・エクイティ(未公開株式投資)やプライベート・レッド(未公開企業融資)
(3)オルタナティブ投資で未公開株投資

【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。

なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。

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この連載について

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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。

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