このうち健康・人命のための部分(A)がどのくらいで、経済対策・景気対策の部分(B)がどのくらいの金額かは筆者は知らないが、元来「健康・人命(A)」と財政規律(B)とはどちらが大切かという問題は二項対立の問題ではない。理屈の上ではAのために当然Bを犠牲にしてもやむを得ないということになる。そういう大義名分があるからAとBを合わせて史上最大のものがなされている。
これが結果的には市場をゆがめることになることは間違いない。コロナの問題以前に日銀が国債の約半分を保有し年間6兆円ずつ株式も購入してきたという意味でコロナ危機以前から市場の歪みは政権と中央銀行がつくってきた。また最近では米FRBがはっきり言えばジャンク債まで買うという。量も種類も無制限に買う。米国の長期金利は世界の投資の最も中心的な基準となる。この基準がFRBの力ずくで変えられる。米国の国債市場も日本の株式市場も自由市場であることを公然と停止し、政権と中央銀行がレベルを決めるために介入してきている。これに対して違和感を感ぜずに維持している現在の株価レベルは現代史の上で後年非常に不思議な現象に見えるだろう。
コロナ封じ込めのために多額の金が使われたという大義名分が現代史の上では通るであろうが、その史上空前の財政支出が経済活動維持・株価維持のために行われたということはやがて印象は薄くなるであろう。そして「バブルは忘れたころにやってくる」そして「その破綻も忘れたころにやって来る」。
1918年から19年にかけてのスペイン風邪も日本国内で44万人(公表では39万人)もの死亡者を出し、当時の人口の0.7%に近い死者(今で言えば80万人に相当する)を出したが、その間は株価は下がらなかった。そこで金融市場史・経済史の上からもほとんどその体験知は葬り去られた。
【目次】
第1部 当面の市況
(1)激動の週後半二日間は既報で既述した通り6月メジャーSQ日に向かったセミ・バイング・クライマクスを形成し結果は穏やかに週を閉じた
(2)米ナスダック、2月に付けた史上最高値を6月8日で塗り替えた。そしてNY市場は10日に、コロナ第2波による経済悪化を懸念してという名目で史上4番目の下げを演じた
(3)日経平均3ヶ月半ぶりのレベルにまで、6月8日(月)に2万3,000円台を回復したが2万3000円台は「三日天下」で11日(木)には早くも2万3000円割れとなった
(4)中長期の見方:「半値戻りは全値戻り」――このアテにならない口伝は今回は当たった
(5)実勢悪を売る段階であるが株だけは高値圏内に居る。この現実を認め如何に行動するか、を考えよう
第2部 中長期の見方
(1)「株価は経済実勢を映す鏡である」――この言葉ほど誤解を招く言葉はない
(2)世界各国で空前の規模の財政支出が執行されている→「コロナ・バブル」発生装置になるのか
(3)「バブルは忘れた頃にやって来て」そして陶酔の中で崩壊する
(4)日本株について二番底の有無を問う質問
(5)コロナ後の経済について武者氏が言うところは要約すると次の3つだ
(6)個人投資家の「利食い売り」(★註)と買い遅れた筋の狼狽買い
(7)日本人の「廉恥の精神」を見抜いて緩い対策で奏功した安倍政権の緊急事態対応(いわゆる「結果オーライ」かもしれないが政治営為はマックス・ウェーバーを持ち出すまでもなく「結果責任の倫理観(★註)」だ)
(8)景気の「谷」はいつか――あるいは直近の株価が表しているように「既に通り過ぎようとしている」のか?
(9)米中対立は貿易摩擦→(香港問題で)イデオロギーの対立の表面化→「為替操作国の指定」
(10)中長期の見方:米中冷戦の行方
(11)「経済か、コロナ終息か」
第3部 読者との交信蘭
読者Tさんとの「6/8週報の(6)「コロナデータの報道に異論あり」に異論があり」との交信
【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。
なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。
この連載について | |
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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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