投機の流儀 セレクション【vol.175】ポスト・コロナの価値観の変化

(Ⅰ)今は誰も言わないが、筆者はグローバリズムに対する評価の変化が出ると思う。グローバリズムとは元々筆者に言わせれば帝国主義に代わって出てきたものである。それは第2次大戦末期1944年にアメリカのブレトンウッズで45ヶ国が参加し世界貿易機関GATTと俗称世界銀行IMFを車の両輪として自由主義経済陣営を未曾有の発展に導いた。帝国主義に取って代わってグローバリズムが讃美された。

しかし、グローバリズムとは事物の移動(「人」の移動も含む)によって政治・経済・社会・文化等が交流し価値観の多様性を認め多様性を受容し合うという美名のもとに進んだが、今回のコロナ禍はまさしくグローバリズムの結果だった。
1918年~1919年の「スペイン風邪」はグローバリズムはなかったが、世界大戦による事物の移動(戦時物資と兵員の国際間移動)が世界感染に大いに役立った。

(Ⅱ)次には「動画」でも二度ほど話題に出たが、企業の内部留保に対する評
価の変化である。これは自社株買いの評価にもつながる。自社株買いはアベノミクス開始以来、株主に配慮する経営が浸透し、盛んになった。
筆者は元々これについては積極的には賛同していなかった。それは本稿でも述べた。これは株主総会を通さずにできる最も安易な株価の上げ方である。これは流通株数を減らして一株当たり純利益を高めて株主に報いるというのだから縮小均衡の考え方である。

最近になって自社株買いに対する評価が少し変わってきたようだ。今まで市場では好感されていたが、最近は自社株買いで資金を使うよりも企業財務を下支えして長期の競争力を高めた方がいいという考え方が出てきたようだ。現に5月は例年であれば自社株買いの最盛期だが今年は減りつつある。
トヨタ自動車も減益発表と合わせて自社株買いを発表するかと思ったら今回は見送った。最近は自社株買いを発表した銘柄で株価が上がらない銘柄が多い。この局面で無理に自社株買いで内部留保を使わなくても企業財務を厚くして長期に備えようという考え方が出てきたのだと思う。このようにポスト・コロナの後は経済面での価値観が変化すると思う。

(Ⅲ)もう一つ考えられるオールドエコノミーに関する価値観の変化だ。「オールドエコノミーの著名株、歴史ある株、これの大底圏内を買って静かに待っているのがオーソドックスな長期投資のやり方だ」と本稿でも述べてきた「伝統的な考え方」が変わるかもしれない。少なくともオールドエコノミー株は次の相場で上昇する時には一番最後になる可能性がある。

しかし「裏の裏は表だ」ということもある。いずれの可能性もあるのであって今からは決められない。そういう可能性はあるということだけは頭に入れておきたい。

(Ⅳ)当然次に考えられるのは地政学上の変化である。具体的には米中対立の激化である。「ツキジデスの罠」に嵌った米中は、いまさら火力を用いる戦争はできないし、さりとて朝鮮半島やベトナムで展開したような代理戦争はできない。その適格地がない。では、どうするか?
歴史家・国際政治学者の出番であろう。彼らは今から出てこなければならない。本稿で言い出したころに出てきたら「ミネルバのフクロウ、黄昏れに鳴き出す」ということになろう。
 
【目次】
第1部 当面の市況
(1)週明けはNY・東京ともに穏やかに始まろうが、毎回の週明けとは違う点が二つある。(Ⅰ)週末の決算発表後の初場だ、銘柄別に明暗が出る(Ⅱ)週明け寄り付き前に1~3月期のGDP発表がある
(2)景気ウォッチャー指数(愛称「街角景気」)、リーマンショックよりも東日本大震災よりも今が最悪
(3)コロナ第2波の懸念と株式市場2番底懸念
(4)当てにならない「半値戻しは全値戻し」の格言
(5)REIT指数続伸
(6)当面の市況、及びその考え方と今の事態に処する基本
(7)今の事態に処する基本
(8)当面の市況は実体経済の指標と株価指標との乖離が目立つ
(9)アベノミクス大相場における現状の位置
(10)「メインストリート」「ウォールストリート」の乖離
(11)“Sell in May”は来るのか
第2部 中長期の見方
(1)トランプ再選は厳しいがトランプ政権はあと4年続く。トランプが再選されれば「景気後退期に再選された第2次大戦後の唯一の大統領だ」という歴史を残すことになり現代史上の初の大統領になる。これによってもポスト・コロナの価値観は変わる
(2)ポスト・コロナを考える
(3)ポスト・コロナの価値観の変化
(4)米中対立の激化
(5)世界の中央銀行の役割が激変した
(6)世界の中央銀行の主な動き
(7)中長期の見方:コロナ、経済活動抑止は当然
(8)何でも北欧を模範生にしたがる日本国民性の一環について。
第3部 読者との交信蘭
(1)佐賀のH様との交信(5月12日)
(2)仙台のM様との「やはり中間反騰か」という疑問についての交信(5月15日)
 
【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。

なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。
 

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この連載について

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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。

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