間断なく相場の記事を読み人の意見を聴いて、それだけを自己の相場観とすることは、これほど有害なものはない。
自ら市場を観察し、人の意見も市場現象の一部としてのみ聞き、種々の書物も教養としてのみ読み、そのようにして自ら思索して構築した相場観は、これほど貴重なものはない。
これを「農業的育成過程で育てた相場観」で「A」としよう。
この「A」は、或る記事に出ていたとか或る人が語っていたという「継ぎはぎ工作的製造過程で作った相場観」(「B」としよう)に、たまたま合致することも往々にしてある。だが、それは自分で上記のAのようなプロセスを踏んでできた相場観であれば、はじめから記事や本を読んで得た相場観Bや評論家の云う相場観B´よりも百倍も勝る。
ショウペンハウエルが「読書について」で言っている。
「さまざまな本から知識を汲み取っただけの人(筆者註:つまりBだけの人)は、旅行案内書を幾冊も読んで或る土地に精通した気になっている人と同じである。こう云う人は(中略)その土地について(語ることはできても)まとまった知識も基礎的知識も全く欠いている」(筆者註:Bの人は旅に出て道に迷った時に狼狽するだけだ、の意)。
禅ではこれを「動中の工夫は静中(じょうちゅう)の工夫に幾層倍も勝る」という意の禅語がある。
筆者の師事する先生が毎回言う。
【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。
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