投機の流儀 セレクション【vol.154】株式投資で長年の経験を積んでも儲けられない人のタイプ

その1:「ズボラな人」
筆者は、株式投資を長く経験を積んでも通算してみると金融資産は増えていないか、または大幅に減らしてしまうタイプの人を多数見てきた。こういう人々には色々な共通性がある。それを今からいくつか拾い出してみようと思う。その「共通性」の中には筆者自身も含まれている場合もある。それを承知の上で反省する意味も含めて一つずつ拾い出してみようと思う。今回は(1)として「ズボラな人」を挙げたい。

ズボラな人は通算して見るとまずは儲けは残らない。几帳面な人が結果的には勝つ。売買の年月日・株数・単価を買った時・売った時、結果としての売買損益、(四半期ごとでも半年ごとでもいいが、時期を必ず決めて)定期的に評価損益を累計して出す、などを几帳面に続ける人が概ねは金融市場で資産形成する。これは共通の特色であると思う。「俺は売買は全部頭の中にある」という人も多いが、そういうことを頭の中に入れるよりはもっと他のことを頭に入れるほうがいいと思う。紙に書くことによって頭の中が整理され頭が空になる。それが良いのだ。「記憶するために書く」という目的以外に「頭を空にするために紙に書く」という意義がある。
世界史の上でスイスやイタリアの交易商人たちは共同出資して交易を営み、その資金や利益の配分を管理する必要に迫られて複式簿記を発明し克明に記録した。これが成功したヴェネチアの商人たちであったが、フィレンツェのメディチ家は会計を疎んじ資金を枯渇させた。それはメディチ家が芸術家や学者を支援し文化の中心になったからではない。会計を疎んじたからだ。
近代においてイギリスや米国のように会計監査制度を強化した国家は繁栄した。初代財務長官となったハミルトンは厳密な複式簿記を国家財政に導入し法制度化した。これら国家単位で述べても、記録にズボラな君主や王様はデフォルトに陥る例が多かった。スペインのフェリペ2世もそうだった。このことは「帳簿の世界史」(ジェイコブ・ソール著、村井章子訳、文藝春秋社,2015年刊)に詳しい。複式簿記こそ資本主義の要だというような例を挙げて述べている。そしてルネッサンス期の絵画には王侯貴族が帳簿を広げている絵が多い。
投資行為の繁栄は帳簿の中にある。投資で得る幸せは青い鳥が運んでくるのではない。几帳面な帳簿が運んでくる。
 
【今週号の目次】
第1部 当面の市況
第2部 中長期の見方
第3部 「日経平均の大底圏内を買い、青春期相場・壮年期相場で資産を作る」というオーソドックスな方法が通用しなくなる可能性
第4部 COP25で早くも馬脚を顕したか小泉進次郎新大臣
第5部 株式投資で長年の経験を積んでも儲けられない人のタイプ
第6部 読者との交信欄
 
【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。

なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。
 

BACK  NEXT

 

この連載について

初回を読む
半世紀にわたる実践投資で得たリターンはおよそ5億円。
博識ゆえ、哲人投資家といわれる著者が実践する、普通の人では看過してしまう独自の習慣とは?どんな相場でも負けない、投資の行動原則とは?
有料メルマガ「まぐまぐ」のマネー部門第1位!
不動の人気を誇る週報「投機の流儀」から、投資に役立つ貴重なセンテンスをセレクト!

【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。

電子書籍を読む!

amazon kindle   楽天 kobo