投機の流儀 セレクション【vol.145】小型株でのマネーゲームと主力株での資産作りとの違い

新興企業株を東証マザーズ指数と日経ジャスダック平均を以て見ることとし、第一市場の主力株を日経平均株価を以て見ることとする。
そうすると新興企業株と日経平均株価との乖離ないし逆行が10月に入ってから目立つ。
この3ヶ月ほどを概観すると次のようになる。
8月は新興企業株も日経平均株もともに並行して下がった。9月に入った途端に動きが変わった。日経平均株は大幅上昇し、新興企業株はジリ高程度であって、この乖離が目立った。10月に入ってからは日経平均株は小幅ながら上昇したが、東証マザーズ指数は大幅に下落し逆行現象を起こした。

これは次のようなことを意味すると思う。
米中貿易協議が歩み寄るという期待が強まると新興企業株から日経平均株に上昇相場は移行する。ということは、外部環境がよくなれば第一市場の主力株が上がり、新興株は下がった。外部環境が良くなれば新興株の短期売買よりも、日経平均株に資金が移ったということになる。少し前の新興株の賑わいで主力株から資金を新興株に移した投資家は、8月の東証マザーズの下げで大幅に毀損し、10月に入って日経平均株は上がっているにもかかわる、東証マザーズ株の急落によって追い打ちを食い、大きな傷を負ったはずだ。
筆者の知人にも長年の経験を積んだベテラン投資家だったはずの人がそういう境遇に入った人が2人いる。
読者諸賢にそういうことになってもらいたくないので、主力株が低迷している時は、「一歩引いて」、「相場から目を離さないけれども市場の真ん中には入らず」、「ごく一部の金で短期売買をするのは結構なことだが決してそれに耽溺してはならず」、「『一足一刀の間合い』を置いて見ていよう」と何度も呼びかけてきた。
新興企業の株は急落したり急騰したりする。急落したところを掬い取って急騰したところを売れば短期的に鮮やかに利益は取れるから非常に楽しい。しかしそれはゲームであって、本格的な金融資金構築の方法にはならない。
そのゲームを重ねて金融資産を構築した人も中にはいるだろうがそれは少数派であり、特別に勘が良く手際が良く機敏な人なのであろう。
筆者は特別な人を対象にしていない。少々の心掛けで誰にでもできる方法、筆者は58年の投資経験の後半はここに重点を置いてきた。そしてこれが一番良いと思っている。読者の中にはこの方法を「投資の王道」と言ってくれる人がいるが、筆者は決して自分で王道とは言わない。王道とも思わない。ただ、この方法が最も堅実にかつ大幅な効果を出せる、かつ誰にでもできる、そう言う方法であると思っている。本稿10月13日号の第3部で紹介した澤上篤人氏の要約文をおよそこれに通ずるものである。

「必ずしも市場に居る必要はない」(ウォール街の相場格言)
その通りである。日本で言い古されてきた格言で言えば「相場上手の器用貧乏」ということわざに相当する。いくら小手先の売買を繰り返して目先の小さな利益を機敏に鮮やかに器用に挙げても大きな金融資産の構築は期待できず、大局的な見地から投資した方が良いという教えを言っている。
 
【今週号の目次】
第1部 当面の市況
(1)三空を空けての大幅高の意味するもの
(2)4日連騰で1,000円高、終わりの2日は瞬間800円高、さてその後は・
(3)4日連騰1,000円高の後を見れば……
(4)日経ジャスダック・マザーズ指数の不調
(5)買い戻しによる先物主導型の上昇
(6)米中貿易の部分合意で短期筋が買い戻し――流儀が違えば見方も変わる
(7)上値にも下値にも限界あり
(8)小型株でのマネーゲームと主力株での資