投機の流儀 セレクション【vol.143】「銀行株に見直し機運」

「銀行株に見直し機運」

これは日経新聞10月3日号の記名入り証券記事の見出しである。記名入り記者の個人的主観が多く入っているように見えるが、まずは事実面を略述する。
9月に入って長短金利の差が大きくなったことは事実である。それに並行して業種別に言えば銀行株が上昇したことも事実だ。長短金利差が開けば、銀行のメインビジネスモデルである利鞘をとる業務は利益が増す。
当然に「長短金利差の拡大=利ザヤの拡大=銀行業は利益が出る=銀行株上昇」、という経路をたどるわけだが、9月は総じて割安株(バリュー株とも言われている)が主導した月だった。割安株(バリュー株)の中では造船・海運・銀行が上昇したが、中でも銀行株の上昇率は少なかった。

バリュー株が相場を主導したのは2016年後半もそうであり、これはBREXITショックで壮年期相場の2万900円台の天井形成にとどめを刺して6,000円下がった、その後の出直りであり、老年期相場の始動期に該当する時代だった。
この時は老年期相場にふさわしく、バリュー株が相場を主導した。その頃バリュー株の中ではとりわけ金融株の上昇が目立った。以上は事実である。

次には記名入り証券記事を引用する。
「16年の経験に倣うならば、銀行株に上昇マグマが蓄えられている」(一ポートフォリオ・ストラテジストの言い分の引用)「銀行株に対する市場の悲観論が根深いほど反発力も意外と力強いものとなる可能性も視野に入れておきたい」これは記名入り記事の記者の主観であろう。

筆者はアベノミス始動以来、最もビジネスモデルとして逆境に置かれたのは銀行株だといい続けてきた。したがって、一番先に大底を付けるのも銀行株だろうと言い続けてきたし「動画」でも語ってきた。しかし、「9月に始動し始めた時の銀行株が大底圏内である、したがって今も大底圏内にある」と言うには早すぎるような気がする。大底はそんなに簡単に付けるものではない。
だが「まだはもうなり」という格言があるのは御存知だろう。一体「まだはもうなり」を言いたいのか、「もうはまだなり」を言いたいのか、早急に二者択一を迫るべきではない。これは禅語で言うところの「二見に堕す;にけんにだす」に陥ることであり、剣道の構えで言うところの「居つく(★註)」として型に固定して動きが固くなることを戒める。
(★註)「居つく」として凝固することを避けるために陰流では「構え」と言わずに「無形(むぎょう)の位」と言い、現代剣道ではフットワークをとりながら竹刀の先を常に動きやすいようにしている。幕末の北辰一刀流のこれを他流が評して「剣先を鶺鴒の尾の如く震わせり」と言った。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況
(1)9月株式市場を振り返れば
(2)10月という月は上下に激動する月
(3)当面の見方:レンジ相場はあくまで仮の姿だ
(4)当面の市況:「先行きの強気姿勢がうかがえる」と言うところまできてNY株の下げが4日の大幅下げを演じさせた
(5)「強気崩さぬ逆張り派」これは日本経済新聞28日版の記名入り記事の見出しの文言である――3日(木)の大幅安の前であった
(6)「銀行株に見直し機運」
(7)個人投資家には高値警戒感、株価調整を見込む――この見方と正反対の見方もある
(8)筆者の見方―-上値も下値も限定的。
だが「炭鉱のカナリア」が示す世界景気減速の予兆。
第2部 中長期の見方
(1)「やらせ」をホンモノと思いたがるプロレスファン、それに取り入る手を継続するトランプ
(2)目先の為替市況
(3)世界経済成長減速の懸念―-3人の信頼おける経済学者の見方を要約する
(4)消費増税で景気逆風、対策の決め手は財政出動―-「近づく財政の出番、消費増税の逆風、相場を占う」
(5)米国景気後退に関するアンケート
(6)民主主義の多数決原理から独立して政府や議会の外に設置された行政機構としての中央銀行
(7)追尾国中国と被追尾国米国
第3部 安倍政権の課題
第4部 来年の再選に向かって狂奔するトランプの異常さ、来年再選されたらどうなるか?落選すれば如何に、の問題
第5部 香港の騒動と英国問題

 
【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。

なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。
 

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この連載について

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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。

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