投機の流儀 セレクション【vol.140】日産西川社長についての深い疑義

日産西川社長についての深い疑義

日産自動車の西川社長の進退―-これは「解任」と発表すべきだし退職金は出すべきではない。むろん、不当・不正にとった4700万円は回収するが、その上で懲罰があって然るべきだ
彼は先週9日に退任したが、筆者に言わせれば退任させずに解任すべきだったと思う。彼は「不当」を働いて、かつ「不正」を働いた。普通は、不正は懲戒免職である。
ここで会社員の言葉の使い方として明確にしておきたいと思う。
普通の場合に「不当」というのは法律的・倫理的に顧客や会社に正当でないことをしたことを言う。これに対して「不正」というのは、その非正当性が私利私欲によったものである時に不正と言う。
「不当」は「勇み足」や「やりすぎ」、「不注意」「ミス」によって起きるが、「不正」は私利私欲から起きるものを言う。したがって、不正の方が何倍も重い。

野村證券では「不当行為」は一番重くても依願退職の強制である。形の上では依願退職になり退職金も出る。「不正行為」は大小に関わらずに懲戒解職である。退職金は出ず証券界で働く資格を剥奪する。

西川社長は株価連動役員報酬を取得するに当たって規定よりも1週間先にずらして4700万円を不当に余計に取得した。この「不当」は自分の懐を増やすために行ったことであるから「不正行為」である。野村證券なら金額の大小にかかわらず懲戒解職(クビ)である。退職金も出ない。それなのに西川氏は退任届を出してそれを受理するというのは頂けない。

司法取引によって全部しゃべれば無罪にするということで追及を免れた西川社長は、社長といってもサラリーマンの雇われ社長であるから大株主から送り込まれたゴーン会長に対して非を正すということはできないことは筆者もよく判っている。そんなことをしたら自分がクビになる。その力関係はみんな良く判るから、せめて「私の立場ではゴーン会長の非を指摘することはできず株主に迷惑をかけた」というお詫びの言葉ぐらいあった上で社長を続けるべきだった。それなのにゴーン会長が逮捕された時のあの勝ち誇ったような西川社長の記者会見はどうだ。まるで鬼の首を取ったように嬉々としてはしゃいで記者会見をしていた、これを筆者は非常に不思議に思った。やはり来るべきところへ来たか、と言った友人もいたが、来るべきところへは来ていない。まだまだ日産は甘い。
「解任」と発表すべきだし退職金は出すべきではない。むろん、不当・不正にとった4700万円は回収するが、その上で懲罰があって然るべきだ。

【今週号の目次】
第1部 当面の市況
(1)先週の市況に中身の変化
(2)先週後半3日は久しぶりに活況を呈した感があった。売買金額も増えた
(3)NY市場の動向
(4)半値戻りを超えれば高いという根拠の薄い見方、一目均衡表・週足ベース
(5)何が「過度」で何が「適度」なのか、それは既報で述べた「風船の膨らみ具合」による
(6)果たして「半値戻りは全値戻り」か?
一方、NYは粘る
第2部 消費増税は景気を壊すか、平気か
(1)消費増税賛成が4回目にして初の5割超え
(2)いろいろな見方(9月8日・NHK「日曜討論」の要約)
・元日銀副総裁の岩田規久男氏(現在・学習院大学教授)の見方
・次に大和総研熊谷亮丸氏の見方。
・飯田泰之氏(明治大学教授)の見方
・筆者の見方
(3)消費増税を前に家計は萎縮
(4)「日経不況」あるいは「マインド不況」
第3部 中長期の見方
(1)機関投資家の8割が日本株を割安だという
(2)「株高・円安」と「枯葉も山の賑わい」
(3)今年度の最大の焦点は世界同時不況、米中貿易戦争はそれに輪をかけた――「脱中国」「脱英国」が進み、そのために経費が要るので前向きな設
備投資どころではない
(4)欧米の中央銀行の追加緩和は円高傾向を呼ぶ要因となる
(5)日銀が出口戦略に一足かけた
(6)香港の騒動
(7)超低金利の罠
(8)先進諸国の中央銀行の今後の出方–安倍首相にハシゴを外された日銀の苦悩
(9)市場予想を上回る米景気指標
(10)LME(ロンドン金属取引所)とBDI(バルチック海運指数)
(11)政権と日銀総裁との間に溝ができつつある
(12)世界経済全体が暗転しても不思議はない状態
第4部 次なるトランプショックは何か? トランプは再選されるか?
(1)次の「トランプショック」は何か―-トランプがパウエルFRB議長をクビにすることだ
(2)パウエルFRB議長とトランプの関係を要約する
(3)レーガン元大統領のやり方を思い出せば「トランプの為替介入はあり得る」と言うことになる
(4)トランプは再選されるか
(5)トランプに振り回されるNY株価—-いつまで持つか?
二千数百年前にプラトンが恐れたようなポピュリズム政治の危険が世界各国に現れた
第5部 内閣改造の中身を少し考える
第6部 日産西川社長についての深い疑義

(1)日産自動車の西川社長の進退―-これは「解任」と発表すべきだし退職金は出すべきではない。むろん、不当・不正にとった4700万円は回収するが、その上で懲罰があって然るべきだ
(2)ふたたび日産西川社長のこと――通産省から来た役員指名委員長は一般企業内の常識たる「不当行為と不正行為の区別」を心得てなかった
第7部 読者との交信(野村、トヨタについてY様との交信、9月13日)
 
【重要なお知らせ】
「まぐまぐ!」でご好評いただき、殿堂入りの誉れを賜った「投機の流儀」ですが、このたびピースオブケイクの運営するコンテンツサイト「note」にも掲載する運びとなりました。
それにあたり、あらためて自己紹介代わりにインタビューをしていただきました。
ぜひともご笑覧ください。

なお、デンショバでの連載は、ピックアップ記事として継続することになっています。
引き続きのご愛読、どうぞよろしくお願いいたします。
 

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この連載について

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【著者】
山崎和邦(やまざき・かずくに)
1937年、シンガポールに生まれ、長野県で育つ。1961年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村証券入社。1974年、同社支店長。同社を退社後、三井ホーム九州支店長に就任、1983年同社取締役、1990年同社常務取締役兼三井ホームエンジニアリング社長。退任後の2001年、産業能率大学講師として「投機学」講座を担当。2004年武蔵野学院大学教授。現在、武蔵野大学大学院教授兼武蔵野学院大学名誉教授。投資歴51年、前半は野村証券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築。晩年は投資家兼研究者として大学院で実用経済学を講義。ラジオ日経「木下ちゃんねる」、テレビ番組「ストックボイス」ゲストメンバー。
著書『常識力で勝つ超正統派株式投資法』『大損しない超正統派株式投資法』など。
電子書籍『4億円投資家直伝 実践 金儲け学 チャンスを逃さない投資の心得39』『スゴい投機家に学ぶ、金儲けの極意12』『名言に学ぶ金稼ぎ法則 世界の賢人が語るカネの真実40』『クソ上司の尻馬に乗る7つの美醜なき処世術 なぜ、イヤなやつほど出世が早いのか』『詐欺師に学ぶ 人を惹きつける技術 仕事に効く人付き合いのポイント44』『投機学入門』『投資詐欺』『常識力で勝つ 株で4倍儲ける秘訣 投資で負けない5つの心得』『会社員から大学教授に転身する方法 第二の人生で成功するための「たった3つ」の必勝ノウハウ』『株式投資の人間学 なぜ、損する株を買ってしまうのか』など。

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